第8話 試験明けの重大発表

 今日は寝起きがいい、ミライの株は前日先物取引でストップ高。そして、友達が家に遊びに来る! 来るのは昼過ぎ、それまでは冷静になって暗記科目に時間を費やそう。姫パパも姫ママも気を遣って朝から外出、お昼は今日も姫ママ弁当。みんなもお弁当をもって集合ってことになってる。


 暗記科目、集中すると時間経過が早い。11時半過ぎにまず華が来た。そして12時前に香菜、全員揃ったのは12時半過ぎ、そこからはお弁当とお喋りタイム。勉強しろよっ!


「じゃあそろそろやるか!」


 口火を切ったのは華。直ぐ様切り替えて4人で猛勉強。15時まではひたすら……そして待望の!


「はーい、みなさーん、おやつの時間だよー」


「何これ? これって高級チョコレート? このマカロンもしってる! 宝石みたいなこれ、ドライフルーツ!」


 珍しく香菜のテンションが高い、そう喜べ! このお菓子盛り合わせは総額で3万オーバーなのだ! わかってくれてひと安心。


「今日は特別なんですよっ、じゃじゃ~ん」


 姫は携帯の画面をみんなに披露、覗き込む3人、察しの良い華は頷く。香菜と舞は説明を待ってる。


「これは私の資産です! みなさんは昨日のニュース見ました? ミサイル防衛システム、ワクワクしますね」


「よく分からない、これがどうなるの?」


「増えます、爆発的に! みなさんに質問、一つ325円のお菓子を4700個持ってます。そのお菓子一つが3250円になったらどうなりますか?」 


「10倍だ!」「儲かる!」「たくさん食べられる!」


食べるのかぁ、香菜かわいいな。


「そして3250円になったお菓子を10個に分けて、一つ325円になる、それがまた3250円になったらどうなりますか?」


「その10倍!」


「そう、私はこれから、いわゆる億(おく)り人と呼ばれる株の長者になるのですっ!」


「ってことは高1でお小遣いが1億5000万もあるってこと? 何でも買えるじゃん!」


「なのでその記念として3万オーバーおやつにしてみました。そして夕飯は……高級寿司店の特上寿司の出前で〜す!」


 寿司桶を出前するなんて、前世のキャバクラ以来かぁ。笑えるね。パパやママも居ないからやりたい放題。でもカトレアの生徒は本当に凄い、おやつも出前も最高に盛り上がったが、キッチリ試験勉強だけはやった。22時の解散まで……。



△△△△△△△△△△△△△△△



 試験当日はすぐに訪れた。学年1位とはいかないが、初日からソコソコ出来たと実感。寿司桶勉強会もかなり役に立った。


 試験日程の終了する前日、試験が終わると滝川先生に声をかけられる。


「伊集院、今日の日程終わった後理事長室に行ってくれない?」


 姫は理事長室に呼び出された。理事長、滝川さんかぁ。トラブルの予感しかない。


 試験終了後早速理事長室へ


「失礼します」


「申し訳ないな、試験期間中に」


 滝川理事長だ! ビジネスライクは変わってない。その他に2名、一人は白井監督、もう一人は白井監督? 二人いる……


「こんにちは。はじめまして白井百花です。ごめんなさいね、驚かせちゃった?」


 姫は知ってる、日本女子代表監督の名前だ。現在日本女子サッカー界は低迷している、代表戦でも放映はない、なので監督の顔は知らなかった。有名な選手は皆無、唯一アメリカでプレーしている黒川は日本でも著名だ。いや、海外での人気の方が高い。日本では代表再建の意志もなく、ひたすら自分の向上を目指す黒川に批判の声も多い。


「まあ座って。白井監督が来てることで察しはつくと思うが……」


 あー、参った。フル代表候補へのお誘いだ。しかし何故? 確か練習試合は録画してたなぁ、白井ってまさか姉妹だったとか……。


「しかし可愛いわねー、恋人にしたいっ」


 あ、デジャブー。咲さんみたいなことを言ってる。チャラい感じなのかも。


「姉さん、それレベル低い発言! ここはカトレアよ」


 やはり姉妹なんだ。姫は納得する。でも私一人で決める訳にはいかない。有名になれば姫の中学時代がネックになる、姫は全く平気だが、両親が傷つく可能性が高い。


 そして正式に代表選出の打診がなされる。滝川理事長が発言する。


「伊集院、実は前もって君のお母様には連絡してある。ご両親の意向としては娘の意思を尊重するそうだ。さっきお母様に会ってきた、一応同級生だしな!」


 知らんよ、そんなの! 3者面談の時は他人だったじゃん。恐るべし滝川女史。



「……私はあまり気が進みません。サッカーは大好きです、でもサッカーを職業にしようとは思っていません。それに……名前が出たりすると色々心配で」


「じゃあプレスの発表はバックアップメンバーってのはどう? 今回はU19世代のアジア選手権があるので、何人か主力が抜ける。その代わりと言っては何だがお手伝いしてもらって、もし続けていけそうなら次の召集の時に代表とかさ」


 百花監督がそう提案する。そうだね、そこが妥協点かな。話し合いにより代表召集のプレス発表はしないこと、学院内では代表のサブメンバーと言うことで発表することになった。


 ちなみに、U19日本代表候補としてソウルでの予選に林部長、斎藤副部長、舞が選出された。

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