第4話 学院内権力
クラスに超絶可愛い子が入ってきた。蓮(れん)の学院生活はより楽しいものとなる予感がしてる。この学院に入るにはかなり学力が必要。猛勉強した甲斐があるってものだ。姫ちゃんは伊集院だからイ、蓮は渡邉だからワ、名前順なので教室の席は遥か左斜め、そんな遠くでも輝いている気がするのは何故だろう。
「姫ちゃんアイドル級だよな、原宿とか行ったら間違いなくスカウトされるね。あー仲良くなりてぇ」
入学してすぐに友達になった慎一の言葉に蓮は頷く。蕨(わらび)慎一、こいつは愉快なやつだ。何と蓮と違い女目的でカトレアに入学した訳ではないらしい。学力を高めることが生き甲斐ってガリ勉タイプかと思いきや、そうではない。アホだ。デリカシーがない、そこが面白い!
連も慎一も身長が180近くある、女子ばかりの教室ではとにかく目立つ。蓮は背が高くて痩せていて勉強も出来ていたので中学時代は王子様だったが……この学院の女共は違う、クラスを見渡す〜女子力もお嬢様度も段違い、攻略が難解そうなのだ、それが蓮のやり甲斐? になっていた、Mr.猿だ。
「姫ちゃん、サッカー部入ったらしいよ。マネージャーじゃなく選手で。スポーツまで万能ってか?」
最近男子6人組の話題は姫ちゃんが中心、可愛いしノリもいい。彼女でなくてもツーショットで歩いたら、それこそ勝ち組。そんな話だばかりだ。女子からもチヤホヤされていて、男子が付け入る隙間もない。
「姫ちゃんってさ、よくある勇者アニメに出てくるプリンセスだよな、名前負けもしてない」
蓮はため息をつく。リアルプリンセス、そう、このクラスの主役は彼女だ。
「あのー失礼 伊集院さんっています?」
そりゃそうだよな。蓮は思った。あのクルクル巻髪の上級生、間違いなく「櫻(さくら)会」の勧誘だ。
このカトレア学院は生徒の自主性が特に重んじられている。その為権力を持つ組織が存在している。学院ではカースト制みたいなものはない、学力も高くイジメやその類は流行らない。そもそもこの学院に入ることで上級JK確定だ。だが、学院内では更に上位存在があり、権力と地位を持っている。学院内で繰り広げられる権力闘争や理不尽さも含めて社会の縮図、乱暴なやり方であるが、これも教育の一貫としている。
3つの勢力〜その一つは生徒会、この学院での権力の象徴。その気になれば校則変更はおろか、校舎施設の建て替えが出来るほどだ。生徒会長は厳正な選挙により選ばれ、選出されれば有名私立大学への推薦確定、そして大きな権力を持つことになる。
そしてもう一つがこの「櫻会」、容姿端麗な生徒が勧誘され華道や茶道から剣道、ゴルフまで様々な会を催す特別な自主サークル。正に学院に君臨する淑女集団。だいたい1学年に4〜5名がスカウトされて在席している、そして全員ゴージャスなクルクル巻き髪をしている。私立大学の推薦は……ない。
そして全国レベルの吹奏楽部、サッカー部を擁する部長会。部活なので生徒会の意向は無視できないが、学院の知名度に高く貢献してるので部の予算などは優先される。そして櫻会に対しては遠慮するようなことはない。
「アナタが伊集院さん? ホントカワイイわね。私、櫻会2年の高田って言うんだけど櫻会に勧誘に来たの!」
蓮は聞き耳を立てる。姫ちゃんどうするんだろ? 明らかに戸惑った様子も見て取れる。
「あのー、私サッカーに入部してしまいまして……」
「マネージャーで?」
「いえ一応選手です」
クルクル巻き髪もこの言葉に絶句。こんな可愛くてサッカー部とかあり得ない、という顔をしている。
少しして
「あーそれなら学院の為にサッカー頑張ってもらわないと! でももし退部するような事があったら声かけてね♡」
さすが櫻会。断られたのに優雅にその場を後にする。
「櫻会、断るってどうなの? 勇気あるよねー」
「伊集院さんのそういう所って凄いと思う!」
伊集院さんの周りに女子が群がってる。称賛しているようだ。伊集院さんもヘラヘラ笑ってる。あれ、きっと櫻会のことよく分かってないな……。
△△△△△△△△△△△△△△
お昼は大概4人で屋上が定番化している。姫はこの時間が大好きだ、JKタイムと呼んでいる。
「ねね姫、櫻会断っちゃったよね。もしかしたらどんなサークルが知らなかったりする?」
舞が姫に尋ねる。
「なに、部活じゃないの? サークル? どっちにしてもサッカー部入ったし。逆に舞に聞くけど、舞が勧誘されたらサッカー部辞めて櫻会入ったりするの」
「いや、それは断じてない」
「そういう事、同じじゃん。ボールいのちなわけで……」
舞と二人で笑い合う。舞とは親友になれそうだ。そしてクールビューティーな華は呆れ顔、おっとり系の香菜ちゃんは……恐らく話の妙を理解してない。みんな異なるタイプだが、大切な友達になりつつある。そうだ、今度みんなを家に連れて行こう、姫ママも友達連れて行ったら安心するだろう。中学の時とは違う事を伝えよう。
世渡りは手慣れたものだ、と姫は思った。
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