第3話 姫のやりたい事
「みなさん静かに」
藤川先生の一言で徐々に静まる。さすがお嬢様学校、お行儀がいい。そんなみなさんにかなりの好印象! そこで調子に乗ってみた。
「えーみなさん、ではここで私への質問タイム! 私のこと少しでも知ってほしいので何でも聞いてくださいっ!」
そう話すと怒涛の質問攻め。趣味から始まり得意な教科、好きな芸能人、尊敬する人、などなど。趣味〜人間観察、得意な教科〜英語(前世では英語で商談してたから)
「好きな芸能人は」
「えーと、声優の早川みさおさんです。」
「アニオタだったりしますか?」
「そーですね。いわゆる」
「尊敬する人はいますか?」
うーん、これは悩む。どう答えよう……。いやここは正直に
「サッカードイツ代表のマルコシアス選手!」
ざわつく、お嬢様だから殆どの人が知らないようだ。
「マルコシアスのどんな所が尊敬できるの?」
この質問を掘り下げるとは……質問したのは遠藤舞さん。姫は前もって借りた入学の集合写真から全員の顔と名前を覚えていた。それが人心把握の第一歩。そして質問タイム、これも人心掌握の有効手段。人気者になるには前世の記憶が大いに役立つ。
「えーと、サッカー選手であると同時に慈善活動をしている所、でもやはりプレーですかね、マルコルーレットは素晴らしい。遠藤さんも凄いと思いませんか?」
確か遠藤舞さんはカトレアにサッカー推薦で入学してきたアンダー16日本代表候補。
「凄いよねー、イケメンだし!」
話はこれ以上引っ張れない、だって他の人は知らないし。でもこの質問が姫の学院生活に大きく影響するとは姫はまだ知らない。
「では最後の質問ー」
このクラスには男子生徒が6名いる。今まではもちろん女子の質問。でも仕方ない、最後は男子の渡邉蓮くんを指名。
「ありがとう! では伊集院さんのスリーサイズは」
その質問地雷じゃない? 女子は引いている、男子は大盛りあがり、猿どもめ。とは思ったが今日は気分がいい。
「ごめんなさい、しっかり計ったことないので今度の身体測定で判明したらみんなに大公表しちゃいまーす」
猿どもに最大のリップサービス、併せて砕けた人柄を女子にアピール。さすがオレ! こうして姫は夢のJKデビューをした。
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昼休み。最初に声をかけてきたのは相川さん。ロングの髪にメガネ、いかにもお嬢様風。
「はじめまして 伊集院さん。相川です。これからよろしく。お昼はお弁当?」
「伊集院です。よろしくね。お昼はお弁当なんだけど、一度でいいから屋上とかで食べてみたいかも」
これ姫のやりたいこと第一弾! 屋上でのお弁当、よく学園アニメにある風景
「じゃあ屋上行きましょう! 舞もいく? 香菜は?」
という訳で麗(うるわ)しき乙女3人と共に屋上で食事をすることになった。メガネ美人のクールな相川華(はな)さん、くせっ毛で背の小さい石井香菜さん、そして浅黒い健康的な肌でショートカットまん丸顔の遠藤舞さん。
屋上ではワイワイと世間話。もちろん姫は聞き役、仲良くなる為にはまず情報収集だ。メガネの華さんは学院の事に詳しい、為になる。香菜さんはニコニコ天然、カワイイ。そして舞さんは終始頷いている。
少しすると頷いていただけの遠藤さんが意を決して
「ねぇ、伊集院さんサッカー部のマネージャーやらない? マルコシアス知ってるならサッカーファンよね?」
そうきたか。多分それを言いたくて今まで頷いていただけなのだろう。サッカーは好きだ。でもどうせならプレーしたいなぁ。まてよ? サッカーやるとJK生活にも支障ありそう、しかし……
「うーん、マネージャーじゃなくて選手なら入部したいな」
「伊集院さん経験はあるの?」
やべー、ないとは言えない。だって前世プロだし。
「チームには所属したことないけどやってみたい! ボールは友達だし」
「そうかぁ、ウチのサッカー部って殆ど推薦だしレベル高いよ。憧れて入る子も居るけどあまり続かなかったり。あー、じゃあレベル高いって思ったらマネージャーになるってのはどう?」
「わかった。体験入部だよね、楽しみ」
こうして明後日の午後から名門カトレア学院の女子サッカー部に体験入部することになった。どんな感じなのだろう? シャワー室とかあるのかな……もちろんこれも合法だから問題なしっ!サッカーかぁ、一応姫のやりたいこと第二弾ってところか…。
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あー、思わず誘ってしまった。舞は少し後悔していた。あんなに美人さんだからマネージャーにしたらある意味大きな即戦力になるかと……。それがまさかの体験入部宣言、部長に報告したがそっけない答え。そして入部体験の前日練習を伊集院さんとするハメに。せっかくの部活オフ日に練習かぁ、仕方ない。
「ごめんねー、少し遅れて。見て見てボールとスパイク。買ってたら遅くなった」
あー買ってしまったのね。これも舞の罪、ごめんなさい伊集院さん。
「やる気満々ね! リフティングとかって出来るの? 伊集院さん」
「うん、実は得意。あとさ、伊集院さんはやめてほしいかも姫でいいよ、だから舞って呼んでいい?」
「そうね、じや始めよう、姫」
姫は嬉しそうに新品のボールを足元に収める。? ? ? 軽くつま先でボールを上げると……まるで曲芸! これ私より上、舞は目を見張る。
「姫、凄くない? 私より……上手いかも」
「だってサッカー好きなんだもん!」
答えになってないが、今はどうでもいい。その後もパスやプレスキック、ドリブル、様々な練習をした。特にドリブルは凄まじい。こりゃ体験入部は大惨事かもなー。これだけのポテンシャルなら、マネージャーで誘ったのはホント失礼、後で謝らないと、と舞はまたまた後悔する。
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そして体験入部初日。姫は全体ミーティングで紹介された。
「伊集院姫です。サッカーはチームでの経験はありませんが、ちゃんと練習もしてきました。よろしくお願いします」
「カワイイー。私の彼女になって〜」
どこからか声がかかる。そしてみんながどっと笑う。
「咲それはあかん。」
「それセクハラ、咲はBチーム降格な!」
なんかかなりイジられてる。咲先輩、この部のムードメーカーなのだろう。ジャージはトップチームのもので、2年生の集団の中にいる。
「光栄で〜す。でも私はみんなの姫でいたいで〜す」
返しはこれくらいでいいだろう。
こうしてその後Bチームの練習に参加した。舞はトップチームなので一緒に出来ないのは残念、もっと残念だったのはBチームでは誰とも親密に話が出来なかったこと。さっきのマスコット的切り返しが逆効果だったかも……反省。でもBチームではレベル合わない、プレーも含めて浮いてる……。
姫はこの体験入部で自身の2つの運動能力に驚いていた。まずはスプリント能力。そう言えば自宅のトロフィーに100メートル走中学の部優勝というものがあったことを思い出す。そしてもう一つは状況判断処理能力、プレーがスローモーションのように感じる。ボール位置や相手の体重移動で次にどうすべきか、判断ができる。マジ神能力! そう姫は類稀な運動能力の持ち主であったのだ。
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