今、心は満たされているから

 メブキは思い出す。


 自分が罪を犯した時のこと。


 詳細は省くが教師が女子生徒にムリヤリ手を出す現場に遭遇して、それを無我夢中でどうにかしようとした。


 結果、なぜだかケンカ両成敗みたいな形になった。


 教師は懲戒免職。


 メブキも停学処分になった。


 だが学校に戻ったメブキは何故か犯罪者扱いにされた。


 教師たちからも腫物のように扱われ、メブキは学校から逃げるように去った。


 そして今の学校に転校し、そして愛ヶ咲 ユナに誘われて文芸部に入り、今に至る。



『頑張れピュアリア!!』 


 どうして自分は朝方にやってるシリーズ物の変身ヒロインアニメの劇場版を愛ヶ咲と一緒にカップル席で観ているのだろうと思った。


 とうの愛ヶ咲 ユナはライトを持って必死に画面内に移るフリフリした派手な衣装を身に纏い、ダイナミックなアクションを決めるヒロインに応援をしている。


 正直メブキは観ていて恥ずかしかった。


「ほら、なにやってるの? メブキも応援しないと」


「なんでそう言う流れになるんだ!?」


「もうせっかくなんだからノリが悪いぞ!!」


「でも――」


「なら――」


 そう言ってユナは豊満な胸を押し当てるのも構わずメブキの体に密着し、メブキの手にライトを持たせてムリヤリにでも応援させようとする。


「ほら、がんばって!」


「あーもう! どうにでもなれ! 頑張れピュアリア!」


「そうそう!! その調子!!」


 

 近くのカフェにて。


「いや~楽しかったね♪」


「そう――」


 恋人席に座り、バカみたいに恥ずかしい応援までした。

 こんな経験もう二度と勘弁だとメブキは思った。


「もう、まだ照れてんの? 役得だと思いなよ?」


「役得って……」


「私の体じゃ不満?」


「バカ!? こんな場所でなにいってんだ!?」


「もう、照れてる照れてる♪」


「あ~もう」


 終始ペースを愛ヶ咲に握られっぱなしだとメブキは顔を真っ赤にしながら思う。

 だが言わなければならないとメブキは思った。

 

「……でもまあ嬉しかったよ。誘ってくれてありがとうな」


 と、照れながら言った。


「あれ? 愚痴が出ると思ったんだけど?」


「そう思うなら最初からやるな!? まあだけど、そっちの方が愛ヶ咲さんらしいと言うか……」


「なんだかんだで楽しんでたんじゃん♪」


 そう言われてメブキは顔を赤くしながらコクンと頷いた。


「愛ヶ咲さんと一緒にいると退屈しないよほんと」


「うん、退屈させないために色々と頭使ってるんだぞ?」


「そう――」


「ねえ? メブっち?」


「なに?」


「今楽しい?」


「……うん」


 苦労する事や疲れる事は多い。

 しかし不思議と苦にはならない。

 だ今は楽しいと言えた。



 メブキは思う。


 これからもこう言う日々が続いていくのだろうかと。


 大変な思いしながらも振り回される日々。


 だがそれも悪くはないとメブキは思った。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

=短編=文芸部(オタク部)の黒ギャルちゃん MrR @mrr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説