ねえちゃんはナルシスト!?
つぎの日、ねえちゃんはあんなに大なきしたのがうそだったみたいに、いつものようにしかめっつらをしてた。
「もしもし美紅、今日暇かって?まあ特段何もないけどね。えっ何急に、それで文香も来るって言うの?」
あいかわらずむすっとしてたねえちゃんのかおがすこしだけやわらかくなったのは、みくねえちゃんからのなにかのさそいのでんわ。
やっぱりおともだちはだいじだよね、オレもかおるやゆう一だけじゃなくもっとたくさんともだちがほしいな。
「えっ…でもいや迷惑をかけちゃ、ええっそれじゃダメ…?うーんちょっと待ってね」
でもたのしそうだったねえちゃんのこえがとつぜんこわそうになり、そのこえににあいのしかめっつらでオレのほうを見てきた。
「ねえ祐二、今日これからなんか予定ある?」
「…べつになんも。しゅくだいならきのうやったし」
「…………何もないって。で、時間は何時から、場所はどこで?しっかり決めないとダメよ、と言うか急な思い付きで人を振り回すのをやめてくれる?私は冷静よ、そういうことしっかりしておかないとあとで面倒なんだから。ああ駅前の喫茶店で午後二時から?じゃあ問題ないわね。でやっぱり祐二連れてかなきゃダメ?ああ薫くんも一緒なのね。じゃあしょうがないか……」
どうもきょうごご2じから、ねえちゃんはえきまえのきっさてんでふみかねえちゃんとみくねえちゃん、それとかおるとあうらしい。でオレもいっしょにいくってことになったってわけだ。
「祐二、いい子にしてて、頼むからお願いね!それから多分、おいしい物が食べられる事になると思うけど、それは父さんと母さんが作ったお金で食べてるって事を絶対に忘れちゃダメよ、いいわね。
いやいやそんな事はないから、でもバタバタ騒いだりして他のお客さんに迷惑をかけるような真似だけはしてほしくないの、どうかその事だけはわかってちょうだい。お願いだからね」
でもねえちゃんはそのことがどうにもいやみたいで、オレにずいぶんとこまかくちゅういしてくる。オレついてきちゃこまるのっていうとくびをよこにふったけど、ぜったいうそだなってことはオレでもわかる。
なんかたべることになるだろうからおひるごはんはすくなくていいってねえちゃんはママにいってたけど、ママは気にしちゃダメよっていったっきり。
そうだよね、たまにはおともだちといっしょにワイワイさわいで、うっぷんばらしってやつをしないとダメだよね。
「もしかして金欠~?」
「まあ勝美が無駄遣いするだなんて太陽が西から登ってもあり得ないと思うけど」
「いや不意の出来事だったからね、もちろん貯金はある程度あるけどさ」
「きっさてんにやってきたねえちゃんは、ふみかねえちゃんとみくねえちゃんがたのもうとしたのよりやすいものをたのもうとしてみくねえちゃんとふみかねえちゃんにからかわれた」
「祐二君、薫君、何食べたい~?」
「あんまり高い物はダ」
ダメよゆうじといおうとしたねえちゃんのようふくのえりを、ふみかねえちゃんがつかんだ。それはいっちゃだめ、っていいたいんだよねそうだよね。
「勝美、何か通販とかで変な物でも買っちゃった訳?」
「つまんないジョークやめてよ、雰囲気が悪くなるわよ」
「こんなとこでそんな暗い顔してる方がよっぽど雰囲気を悪くすると思うけど~」
「そうね…」
ふみかねえちゃんとみくねえちゃんがどんなににこにこしていても、ねえちゃんのかおはぜんぜんあかるくなんない。
そんでねえちゃんはもうわかりましたたのみますよたのめばいいんでしょってかんじでふみかねえちゃんとみくねえちゃんとおなじのみものと、オレとかおるのためのチョコパフェをちゅうもんした。
「いただきまーす!」
「そうそう、ちゃんと食べる前と食べた後にはお礼を言わないとね」
それからちょっとあと、オレとかおるがはこばれてきたすんごくせのたかいチョコパフェにびっくりして、ねえちゃんたちはアイスコーヒーっていうくろいのみものにストローをさしこんだ。
それにしてもこの生クリームってフワフワしててめちゃくちゃおいしい、ねえちゃんたちもたべればいいのに。
「……文香」
「勝美、もしかして私の漫画が何か売れたとでも思ってる?アハハハ、私の漫画なんてまだまだだよ。中学校の文化祭の時のしおりに使われたのが漫画家である私としての唯一の成果だもん。その事は覚えてるでしょ?」
「うん」
「勝美ってずいぶん髪の毛きれいだよね~、何か使ってるの?」
「特別何も。シャンプーだって父さん、母さん、祐二と同じの使ってるし。まあ少し時間はかけてるつもりだけど、と言うか文香」
「まあねえ、私漫画が優先であんまり気にしてないからね。ママからも言われてるよ、漫画に情熱注ぎ込むのはいいけどもうちょい女子高生らしくおしゃれしてもいいんじゃないかって。ねえ薫」
かおるはアイスクリームをほおばりながらうなずいた。
オレにはシャンプーのいいわるいとかはよくわかんないけど、ふみかねえちゃんがねえちゃんよりかみのけに気をくばってないなーってことぐらいはわかる。だってねえちゃんのかみのけのほうがきれいだもん。あっみくねえちゃん?ねえちゃんとおなじぐらいかな。
「ちょっと祐二、あんまり人の髪の毛をジロジロ見ちゃ失礼でしょ。文香に謝りなさい」
「勝美ってナルシストだよね」
あっ、ねえちゃんがとつぜんせきこんじゃった。
オレはおもわずねえちゃん大じょうぶってこえをあげたけどねえちゃんは右の手のひらをオレにむけながら左手でむねをおさえてた。ぜえぜえはあはあいってるしぜんぜん大じょうぶそうじゃないんだけど、いったいなにがどうしちゃったの?
「文香…………」
「コーヒーが気管に入っちゃったの?大丈夫勝美」
「大丈夫…じゃないっ……あの、すみませ、ん……」
きっさてんの中の人ぜんぶのしせんってのをうけることになったねえちゃんはむねをさすりながらふみかねえちゃんをにらんでる。
ねえ、ナルシストってなに?
「まあわかりやすく言えば~私ってメチャクチャカッコいいって思い込んでるって」
「私はそんなにうぬぼれてないわよ!」
「ねえちゃん、みんな見てるよ。こえが大きいよ」
「文香、私のどこら辺がうぬぼれてるって言うの、説明してちょうだい」
「さっき、祐二君に向かってあんまり高い物は食べちゃダメって言おうとした時の勝美の目、ずいぶんきれいだったもん。何て言うかさ、祐二君の全てを自分の思いのままにできそうって言うか、しなきゃいけないって言うか」
「私たちはしょせん、びた一文も稼げてない身分よ。それを自覚してつつましくふるまう事の何が悪いの?」
「だからそういうのをうぬぼれって言うの」
ふみかねえちゃん、ねえちゃんはじぶんのつくったおりょうりのことをおいしいだなんていったことはいっかいもないよ。
うぬぼれてるんならばこんなにおいしいりょうりはほかのだれにもつくれないだろうっていうんじゃないの?
「祐二君は薫と一緒にパフェ食べてて。話が長くなりそうだから早くしないとアイス溶けちゃうよ」
オレはふみかねえちゃんのいうとおりに、はんぶんぐらいしかのこってないパフェの中のアイスクリームをたべた。
ほんと、つめたくてあまくてすごくおいしい。ねえちゃんもこういうのたべれば気がかわりそうなものなんだけどなー、どうしてなんだろうな。
「勝美、祐二君にあんなに気を使わせて何がしたいの?」
「そりゃ、祐二に人様に迷惑をかけない優しくて立派な子になって欲しくて…これがうぬぼれだって言うの」
「悪いけど、完全無欠のうぬぼれだよ」
「もちろん理想は大事だけど~、自分一人で祐二君を理想の存在に仕立て上げようなんていう事ができると思ってるの~?」
「漫画でさえ一人で仕上げるのって大変なんだよ、祐二君って言うもう何百人の影響を受けて変わりまくってる存在をさ、どうやって勝美の理想の弟にするつもり?」
「だから……」
ねえちゃんのくちびるがプルプルふるえてる。そんなにさむいのかな、パフェの中に入ってるアイスをたべてるオレのがよっぽどさむいはずなのに、ああもしかしてあのアイスコーヒーってのの中に入ってるこおりのせいなのかな。
「昨日さ、私も部活で学校いてさ、帰りがけに勝美を見かけたんだけどさ、あまりにも暗い顔してるから何にも言えなくなっちゃって」
「あらそうだったの~」
「ねえ祐二君、昨日一体何があったの?わかる範囲、話せる範囲でいいから話してくれない?」
「祐二!」
ねえちゃんはやめてよっていいたそうだけど、ふみかねえちゃんもみくねえちゃんも、ねえちゃんのだいじなともだちだもん。ねえちゃんはいっつもオレにいってる、ともだちだからこそだいじにしなきゃいけない、うそをついてだますようなまねをしちゃいけないって。
「全部言っちゃっていいからね、祐二君お願い」
「ごめんね勝美~、でもこれ以上ぐずぐずためておくと心にも体にも悪いわよ~、お肌荒れちゃうよ~」
「でもちょっとお願い、場所は変えさせてよ…お願いだから…」
ふみかねえちゃんとみくねえちゃんはまっかなかおでうつむくねえちゃんのかたをかかえながらお金をはらってきっさてんを出た。
そして、オレたちはふみかねえちゃんのいえにやってきた。
なんかいか入ったことがあるけど、やっぱりオレのうちとちょっとちがう。ふだんならちゃんと手をあらいなさいだのあいさつをわすれちゃダメよだのいうねえちゃんが、なんにもいわないままふみかねえちゃんに手をひかれてリビングっておへやに入ってった。
「ここなら問題ないでしょ」
「じゃあお願い~祐二君」
ふみかねえちゃんもみくねえちゃんもそういってる。ねえちゃんにとってものすごくはずかしいことなのかもしれないけど、でもはっきりいったほうがねえちゃんのためになるのならばとおもって、オレははっきりいうことにした。
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