???-2 ベンシーがいる現世とは別の異世界ではとある国同士が争いあっていた。

 ベンシーがいる現世とは別の異世界ではとある国同士が争いあっていた。ベンシーの父が王であるギアテクサ王国とスレルド王国との戦争だ。


 ギアテクサ王国には守り神と呼ばれるドラゴンがいた。巨大な身体で空を飛ぶそのドラゴンは『ギア・メドロ』と呼ばれ、700年の王国の歴史の中でギアテクサ王国の象徴として国民は認識して心の支えとなっていた。

 しかしある悲劇が起きた。メドロが死んでしまったのだ。国民は深く悲しみ、なんとか復活させられないかと策を練った。


 ベンシーのいる世界では生命を復活させる方法がある。純粋な魔力に屍の一部を捧げて強い祈りを込めれば復活させられるのだ。

 ギアテクサ王国は屍の一部と強い祈りはすぐに確保できるが肝心の純粋な魔力が無かった。純粋な魔力とは、まだどの動植物にも通されていない、その世界において魔力として湧き出たそのままの魔力のことだ。


 純粋な魔力が湧き出る箇所は世界に点在しているが、非常に数が少なく見つけるのは困難だった。しかしギアテクサ王国はひとつの箇所を知っていた。

 それはスレルド王国の領地内にあるとある湖で、湖の下からから純粋な魔力が流れて出ていて湖の水全体が純粋な魔力を帯びていた。スレルド王国は『泉』と呼んで国をあげて厳重に管理していた。


 スレルド王国にギアテクサの王が直々に復活のための魔力の提供を頼みに行った。しかしスレルド王国は断固としてそれを拒否したのだ。スレルドの王は、他の困り事なら承諾するが生命の復活だけはあってはならないの一点張りだった。

 なのでギアテクサ王国は無理やり奪うことにしたのだった。ギアテクサの国民もほとんど乗り気で戦争は始まった。それが摩耶がベンシーと出会う一年ほど前のことだった。


 戦争の最初の方はギアテクサ王国が優勢だった。しかしある時スレルド王国は摩耶のいる世界から数人の戦士を選び出して味方につけた。それが新崎などの存在だ。


 もともとベンシー達の種族は他の生命に取り憑いて肉体を支配したり力を分け与えることができる。ただし同種族同士では出来ないので、スレルド王国はスレルド王国のある世界と密接に関わる別の世界の住人に頼むことにしたのだ。

 スレルド王国がこの戦略を打ち出した一方でギアテクサ王国はこれをしなかった。メドロの復活というのはこの国の誇りに関わることなので国外の存在とは協力したくなかったのだ。しかし摩耶達の世界に行き人間を乗っ取って強制的に操る戦略を取ることはあった。摩耶の見た戦いもそのひとつだ。


 そして今、戦争はスレルド王国の勝利となってスレルド王国からベンシーの首が要求されている。

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