ガスター-2 「くっそ!」と尚も立ち上がるガスター。
「くっそ!」と尚も立ち上がるガスター。
ガスターはまだ動けるのだが、しかしガスターもベンシーも戦闘経験から既に勝負がついている事に気づいていた。
ベンシーが摩耶の口を強制的に借りて喋った。
「ガスター、諦めろ。お前一人じゃ勝てないようだぞ」
「そうみたいですね、ベンシー様。しかし、あなたの敵は俺一人じゃないです」
「そうみたいだな。だからここで……ここで1人でも減らしておかなきゃな。それもガスターを殺せるのなら大きい」
互いに辛そうに、その辛さを共有するように、同情するように目を合わせた。するとしばらくしてベンシーがやっていた摩耶の口の支配が無くなったのを摩耶が感じ取った。
「おい、お前。殺るぞ」とボソッと言うベンシー。
「ええっ!? ふざけんな、
「甘ったれたことを言うな! こいつはお前を殺しに来たんだぞ? 殺されたって文句は言えないどころか、殺さないとまた殺しに襲ってくる。それでもいいのか?」
「それも嫌だけどさぁ……」
「なら殺せ! それしか無い! ……それか俺を差し出すかだ。はっきりしろ! 俺はまだガスターを殺せるほど回復しきってないんだ。お前が身体を預けてくれなきゃ……」
明確にガスターを殺す指示を出してくるベンシー。その声の中には少々の震えがあったが、それでも摩耶を強制的に操ろうとしてきた。
だが摩耶は明確な抵抗の意思があったために弱っていたベンシーは摩耶を制御出来ずにいた。摩耶がベンシーに懇願するように言う。
「む、無理言うなよ。なんで俺がそんな、殺しなんてさぁ……」
「甘ったれてんじゃねえ! やるしかねえんだ! そうじゃないとお前も危ねえんだぞ!」
「嫌だって……! 俺にはそんな事……!」
「
「だ、だからってそんな……、殺しの片棒担ぐみたいじゃんか!」
「あああっ、もう!」
その問答にガスターも戸惑っていたが、摩耶がただの一般人である事に気付くとその謎も消えた。
ベンシーは心底嫌そうにひきつって歯を食いしばる摩耶を見て、しばらく考えた後に諦めたようだ。摩耶は無意識的に肉体を預けるのに抵抗していて、そして抵抗している人間を操るだけの魔力は今のベンシーに無かった。
「くっ……。分かったよ。だがお前、約束しろよ。あの時にガスターを殺しとけばよかったってのは絶対に言うな」
ベンシーの最後の言葉は摩耶への威圧が含まれていた。摩耶は思わず萎縮しながらも首を一回縦に振った。そしてベンシーがガスターに「そういうことだ。じゃあな」と言い残すと道路を走って逃げていく。
ガスターはただその後ろ姿を眺めながら月明かりに照らされると、一応助かった命にホッとするようにため息をついた。
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