黒島摩耶-4 ガスターはずんずんと摩耶に走ってきて、剣の間合いに入ると容赦なく大剣を横に振る。

 ガスターはずんずんと摩耶に走ってきて、剣の間合いに入ると容赦なく大剣を横に振る。戦闘経験などない摩耶は構えているもののどうすればいいか分からず固まってしまっていた。

 しかしその時摩耶の身体の自由がベンシーに制御された。身体が勝手に動いた摩耶はそれに身を委ね、ベンシーの制御のおかげで大剣をジャンプすることによって回避する。


だがガスターは飛んだ摩耶の肉体に合わせて脇腹目掛けて蹴った。摩耶は吹き飛ばされ地面にゴロゴロと転がる。

その摩耶に向かってさらにガスターが追いかけてきた。うつ伏せで地面に手をついて何とか立ち上がろうとする摩耶の背中が大きなガスターの足で踏みつけられた。地の底に沈めるかのような踏みつけに「ぐはっ!」と思わず摩耶の口から声が漏れる。


 ガスターが剣を振り上げる。このまま大剣が振り下ろされたら摩耶の頭が胴体と離れ離れになるだろう。生きた心地がしなくなった摩耶は目を瞑った。

 すると摩耶の横に触手が出現してガスターの腹に向かって勢いよく伸びた。

 ガスターは剣を持ったまま後ろに吹き飛ばされ、構えた剣が振り下ろされずにすんだ。そしてベンシーが摩耶の肉体を操って立ち上がらせると、小さな身体を浮かせて摩耶の耳元に近づき囁いた。


「これは俺の力だ」

「まあ……だろうな……」と戸惑う摩耶。

「俺は今からお前に完全に魔力を預ける。だからお前も完全に俺に肉体を預けてくれ。そうしないとガスターに勝てないだろう」

「よく分かんないけど、力を抜けばいいんだな? 確か」

「ああ」


 またしてもガスターが迫ってきた。走りながらガスターがガスターから見て右横に大剣を構え、そして剣の間合いに入るとそのまま横に斬りかかった。

 すると摩耶の横、大剣の軌道上に素早く生えてきた三本の触手が大剣を受け止めた。ガスターが触手に食い込む大剣を引き抜く、その隙を突くように摩耶の身体が接近し、そしてがら空きのガスターの腹に拳を素早く三発打ち込む。


 そのパワーで身体が仰け反るガスターだがそれでも大剣をしっかりと持っていた。そして怯むことなく引き抜いた大剣を振り上げる。

 攻撃したら逆に危ないと判断したベンシーは摩耶の身体を左に避けさせると、一瞬後に振り下ろした剣は地面に突き刺さった。後のコンクリートの修理などガスターはお構い無しだった。

 摩耶の方をギロリと見るとすぐさま剣を持ち上げて横に振るった。しかしベンシーは後ろに回避したため当たらない。

 横に振った大剣の遠心力でガスターが体制を立て直している僅かな隙を狙ってベンシーが触手を呼び出した。ガスターのすぐ下の地面から急速に伸びた触手はガスターの腹に勢いのままに当たって吹き飛ばし、ガスターの背がぶつかったガードレールはひしゃげてしまった。

 この勝負はベンシーの勝ちだと明らかだった。

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