黒島摩耶-3 屋根の上からさらに屋根の上に飛び移って走る摩耶を追いかけているガスターは、大剣を持ちながらも身軽に進んでいる。
屋根の上からさらに屋根の上に飛び移って走る摩耶を追いかけているガスターは、大剣を持ちながらも身軽に進んでいる。
裏切られたベンシーはというと心ここにあらずと言った様子だった。
「おい! ベンシー! しっかりしろよ!」
摩耶が走りながらながらベンシーの意識を戻そうとするがあまり効果は無さそうだった。
摩耶は元々運動が得意な方では無く走り方も綺麗ではなかったため段々と追いつかれ、とある家の屋根でガスターが摩耶に追いついた。
「くっ!」
摩耶は慌てて地面に飛び降りるとガスターも大剣を振り下ろしながら摩耶に目掛けて飛び降りる。
摩耶は本能から着地と同時に素早く横に移動して大剣を避けた。大剣は轟音を立ててコンクリートの地面にめり込む。
「きゃあああああ!」
近くにいた女の通行人が逃げ出す姿を横目に見ながら、摩耶は後ろに跳ねてガスターとの距離を取った。
ガスターは大剣を引き上げて持ち直し、摩耶に向かって問いかける。その声には相手を無理やりにでも押さえつける威圧感があった。
「誰なんだ? お前は。首を突っ込まないで欲しいが」
「そんなこと言われても……。殺されそうになってるやつをほっとけないだろ」
摩耶はガスターの威圧感に怯むが弱々しい声でそう言った。するとヘトヘトの小さなベンシーが割り込んでくる。
「お前に助けろだなんて頼んでない」
「じゃあ死にたいの? だったら俺なんもしないけど」
「……チッ」
ベンシーの舌打ちを聞いて、摩耶はガスターに目線を戻して毅然とした態度で向き合った。
「そういうこと。こいつ死にたくないって」
「まだ分からん。なぜお前が助けたがる? お前にとっての意味が見えてこない」
「いやだってそりゃ……。意味とかじゃないだろ。助けてほしそうなやつがいて、自分が助けられるんだったら普通は助けるだろ?」
「話にならんな」
それを見た摩耶も腕と足を構える。ただしガスターとは違って素人の雑な構えであった。
口調に反して摩耶の背筋は恐怖で冷え切っていて、心臓はバクバクとけたたましいリズムで本能の危険を知らせる。摩耶の額から流れる冷や汗が頬を伝った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます