ガスター-1 これ以上無いほど綺麗に背中を斬られたベンシーだが、しかしガスターが思わず躊躇してしまったようで死には至らない。
これ以上無いほど綺麗に背中を斬られたベンシーだが、しかしガスターが思わず躊躇してしまったようで死には至らない。咄嗟に片方の脚で倒れ込む身体を支えられるくらいの力がベンシーにあった。
ベンシーが振り返り当惑した瞳をガスターに向ける。ガスターの方も心底苦しそうな表情でベンシーを見るが震える腕でまた大剣を振り上げた。
「お、おい、ガスター、どういう……」
「すみません、ベンシー様。……決まったことです」
覚悟を決めた目でガスターが大剣を上向きに構え、事態を飲み込めず動けないベンシーに対してもう一度振り下ろす。
しかしその大振りはベンシーに当たらなかった。駆けつけた摩耶がベンシーの身体を引っ張って避けさせたのだ。
「誰だ貴様!」
摩耶の存在に気づいたガスターが威圧的に言うもののお構い無しに摩耶はベンシーに声をかける。その声は焦りがこもっていた。
「おい! 俺に取り憑け! 早く!」
意識をハッとさせたベンシーがすぐさま霧状となり摩耶に取り憑いた。摩耶の身体に黒い模様が浮かぶ。
その時ガスターの三度目の振り下ろしが摩耶の頭上に迫ってきたが、ギリギリで回避が間に合った摩耶が逃げるように距離を取って、家伝いに上の屋根へと登った。
追っ手から屋根の上を走って逃げる摩耶。続いてすぐさま屋根に登ったガスターが摩耶の背中を睨んでいた。
小さなベンシーが目を泳がせながらつぶやく。
「なんでだガスター、決まったことって……」
「お前が知らないなら俺はもっと知らないっての! どうすんだよこっから!?」
摩耶の考えの中にもう明日のバイトのことは無かった。
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