ベンシー-3 「ひとまず、お前は今起きたことを忘れろ。何も気にするな。巻き込まれただけなんだからな」
「ひとまず、お前は今起きたことを忘れろ。何も気にするな。巻き込まれただけなんだからな」
「巻き込んだのはお前だけどな。疲れてるのに」と鼻で笑う摩耶。
「言ってろ。だがまだここから離れるなよ。あの女に見つかるかもしれない」
「あのさ、別に俺は見つかってもいいんじゃないの?」と当然の疑問を浮かべる摩耶。
「…………。いや……お前には俺と一緒に来ることになるかもな」
「は!? なんで?」
「俺を助けたからな。あの場から逃げた時点でお前は俺の協力者としてマークされて追われる立場になっただろう」
「待て待て待て! 困るんだけど! 明日バイトあるし!」
「マークされたってのは予想に過ぎないが……もしお前が捕まってしまえば、どうだろうな。無事じゃ済まないかもしれん」
「なんだそれ! 拷問されるみてーなニュアンスだけど!」
「しかねないぞ、あの連中なら。本当に何も知らなくてもお前はある程度の傷を負うだろう」
「よく分かんないんだけど! あの連中ってなんだよ、お前が戦ってる相手ってそんな野蛮な奴らなのか?」
「後でゆっくり教えてやるよ。一応助けられた恩だ。呼んだ俺の仲間がもうすぐ来る。お前も付いてこい」
「……うーん、俺はいいかな」
そう言い切った摩耶にベンシーが驚く。
「何? いいのか? 危ないだろ」
「だってあの女なら許してくれそうだし、明日バイトあるし、危ないって決まったわけでもない。もしあの女が来たら許してくださーいっつって頭下げとくよ。第一、俺なんの関係も無いしな」
「……そうか。ならいい。勝手にしろ」
「言われなくても」
摩耶の意志を飲んだベンシーは、どうでも良さそうに細道の横の塀に寄りかかった。
するとその時、細道の奥の大通り、摩耶が入ってきた方からこちらに迫る足音がした。その足音は大きく強かなもので、足音だけでも摩耶に威圧感が伝わってくる。
「うわ、なんだ?」
「俺の仲間だ。ガスターって言う。向こうの世界から来たんだ」
「向こうの世界……? ……もう考えないようにするよ」
「それが良い」
摩耶が見たベンシーの仲間の姿は人間ではあるが確かにこの世界の人間とは少し違うような雰囲気を醸し出している。ベンシーよりもさらに一回り大柄な体格の男は背中に大剣を背負っていた。
「よく来た」
ベンシーが細道を抜けていった。摩耶は着いていかず見届ける。大通りにベンシーが出てガスターと対面すると、ガスターはいそいそと話しかける。
「ベンシー様。ご無事でしたか」
「ああ。危なかったけどな。お前もよく生き残った」
「それであの男は?」
ガスターがベンシーの後ろの細道にいた摩耶を指さす。ベンシーがそれに合わせて振り返って、ガスターに背を向けて摩耶を見る。
「あいつか? そういえば名前を聞いてないな。だがもう奴は───」
ズドン!とベンシーの背中がガスターの大剣によって切られた。ベンシーの理解が追いつく前に身体が前のめりに倒れ込んでしまう。
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