天使の依り代

「んっ……」

「気分はどうだ?」

「ここ…は……?」


 記憶が曖昧なのか、天使の依り代の時の記憶は消えているのかわからないが、とにかく何事もなく彼女は目覚めた。


「君は倒れていたんだ」

「あ、そうだ……私、売られて……それで……」


 なるほど、孤児や買い取った子供を天使降臨の実験にしていたわけか。

 しかし、彼女は悲しいのだろう泣き出してしまった。


「お父さん、お母さん……!!」

「君は、両親に売られたのかい?」

「ううん、お父さんとお母さんは


 あぁ、そういう事か……。


「辛かったね、安心していい……ここは安全な場所だ」

 

 そう言った所で、二人に視線を向ける。

 男の僕では言いにくいこともあるだろう。

 なのでベル達に任せることにした。


「最後に一つ聞かせてくれ、君の両親は何処で殺された?」

「ルネーク砂漠を渡った所」

「そうか、わかった」


 ルネーク砂漠は主要都市と都市の間にある砂漠だ。

 あそこには盗賊が居たのか……。

 そんな情報、僕が居た時にはなかった。

 

 ま、そんなことはどうでもいいか……。

 どうせ今からそいつを捕まえるのだから。


「レティシアとセリス、ラナーク……ついて来てくれるか?」

「え、うん」

「はい」

「了解です!!」


 そう言って僕達はルネーク砂漠に向かった。

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