メビアの権能

 集中し。

 相手は天使だ。

 先程の動きから見るに、相当早い動きだった。

 次来られたら、恐らく命はないだろう。

 音、視界全ての感覚を研ぎ澄ませる。

 エレナより速い攻撃、集中だ。


「では、神の為に……」

 

 瞬間、目の前にメビアが現れる。


「死んでください」


 振り下ろされる剣、感覚を研ぎ澄ましてなお届かない速さの極致だった。

 だが、まだ見える。

 致命傷は避けれるが、傷はこの際仕方なかった。

 重心を後ろに向ける。

 振り下ろされた剣はそのまま僕の胸を切り裂く。

 浅く切りこまれてしまった。

 胸には斜めに切り込みが入る。


「ほう、今のを避けますか」


 感心したように言う彼女に少し違和感を感じた。

 あれだけすぐに詰められるのに、なぜ追撃してこない。 

 警戒しているのか、それともあれで終わると思ったのか。

 後者なら舐められている他ならない。


「ご主人、何ぼーっとしてるんですか!!」


 ボーっとしていた?

 そんなわけがない、僕は一瞬たりとて隙はないはずだ。

 素早さじゃない? 

 だとすれば……。

 ウルスラの言葉を思い出す。

 大天使の能力はそれぞれが違うと言っていた。

 能力……もし、そうなのだとすれば。


「ラナーク、レイン……少し試してみたいことがある」


 もし、僕の予想が正しいのなら、彼女の能力……権能は……。


「話は終わりましたか?」

「あぁ、レイン、ラナークあれをやる」

「了解しました!!」

「仕方ないわね」

「「「視覚共有!!」」」


 そう言って僕らは魔法を唱えた。

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