久方ぶりの食事

「そうだな、いただこうか」


 皿を受け取り、食べる。

 野菜の地面から吸い上げた新鮮な水の味がしてとてもおいしかった。

 今まで食べた野菜の中で最高に美味かもしれない。

 精霊の森というからにはここの自然は精霊の加護で瑞々しいのかもしれない。


「美味しいな」

「え、そうなんですか?」


 微精霊Cは外の世界に興味があるのか、目を光らせて近づき、聞いてくる。

 

「あぁ、この野菜達は僕が旅をしてきた中で群を抜いて美味しい」

「ここの外ってどんな料理があるんです?」

「こことは大して変わらないよ……ただ、料理に見栄えが加わった程度かな」


 実際、各食材の質はこちらの方が断然いいと思う。

 町で食べに行った店より、こちらの野菜の方が高くても食べたくなる。


「見栄え?」


 あぁ、ここではそういう言葉は使わないのか。


「人で言う身だしなみだ……君達だって気を付けているだろう?」

「身だしなみ?」


 それもないのか。

 それでその見た目は、世の女性が見たら泣くぞ。


「はぁ、明日作って見せてやる」

「え、明日も訓練で来てくれるんですか!?」

「あぁ、ここには三日滞在するしな……明日の昼に昼食を持って行ってやる」


 そう言うと、ピノと微精霊達は嬉しそうに互いを見つめる。

 外の世界の料理が味わえるから楽しみなのだろう。


「必要な食材は私達にお任せください」

「それには及ばない、僕が調達して調理する……だが、あまり期待はするなよ」


 最低限の野営料理は出来るが、町や他の冒険者程出来るわけでもない。


「楽しみです!」

「あぁ、楽しみに待っていろ」


 それからしばらくして僕達は解散となった。

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