あ、詰んだ

 僕たちは素早い行動を不思議に思っているとウルスラがある場所を見て硬直する。

 向いている方向は僕の後ろ。

 さては、さっきの仕返しか?

 その手には乗らな……。

 そう思いながら振り返ると、言葉に詰まる。

 目の前には笑顔で僕らを見ているエレナがいたのだ。

 ノウェム~!

 彼女は探知魔法を発動して、エレナに気づき現場離脱したのだ。

 エレナは笑顔だ。 

 とてつもないくらいの上機嫌の時の顔だ。

 しかし、オーラというかなんというか、顔は笑顔なはずなのに後ろに何か怒りの化身のような何かを纏っていた。


「や、やあエレナ……いつからそこに……」


 エレナに問いかけるが、笑顔のまま僕の方を見ている。

 超怖い。

 

「エレ…ナ…さん?」


 今すぐ逃げたいところだが、本能が背を向けるなと言って身体が動かない。

 獲物が捕らえられる寸前のような感じだ。


「そ、それじゃあ私は執務に戻るわ……」


 おいこいつ汚ねぇ!


「うん分かった、行ってらっしゃいウル」

「う、うん……行ってきます」


 そういうと、ささっとノウェムと僕が共同で設置した門に向かう。

 ノウェムが設置した門は魔王城とこちらを繋ぐ門である。

 特殊な素材で錬成して魔力を流せばいつでも行き来が可能だ。


「えっと、エレナは何の用で?」

「うん、ウルちゃんこっち来てないかなって思ってきたんだ~」


 あはは~っと笑顔を見せる彼女……。

 気まずい空気が流れる。


「その、なんだ……せっかくだから何か食べていくか?」

「それよりさ~、レウルの実力、私まだ知らないんだよね」


 エレナは持っていた剣を抜くと僕の方に向けてくる。


「久々にどう?」


 あ、死んだかも……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る