36 偵察

 召喚されたのは黒狼だった。

 この獣の特徴は透明化できて特に夜になると全く分からなくなる希少種だ。


「では、少し毛をいただきますね」


 そう言って少し毛を抜く。

 そして奥へ行き、丸い鏡をもって現れる。   

 そして手に持った毛を鏡に押し当てる。

 魔力を流して融合させると、目の前に黒狼の視界が映し出される。


「出来ました」

「じゃあ、頼んだよ」

 

 黒狼は吠えると、魔王城から走り去った。

 

「取り敢えずはあの辺は夜に黒狼を偵察させよ」


 恐らく、あいつらは夜襲を仕掛けるだろう。

 そういう奴らだ。

 向こうにつくまであと二日、様子を見るとするか……。

 

「取り敢えず、ブライ……黒狼から連絡が来たらまた連絡します」

 

 そういうと、私は力が抜ける。


「ふぅ~」

「大丈夫ですか~?」


 ノウェムはお茶を渡してくる。

 それを口に含む。

 乾いていたのどに染み渡る。


「喉が渇く事が起きすぎじゃな~」

「もうその口調いいですって~」

「そうですよ、行事でも普通にすればいいのに」


 シエラとノウェム、ウルゴフは笑う。


「いや、まぁそうなんだけど……魔王の威厳が……」

「そんなの、そんな口調必要ないですよ」

「そうそう~、皆~ウルちゃんだからついてきたんですよ~」

「皆、なら私はもうあの口調は止めとするよ」

「そうしろそうしろ~」


 魔王の威厳なんてしょうもない瘡蓋なんてもういらない……だってウルスラについてきてくれる仲間がいるのだから。

 はじめはウルゴフ、シエラとはじまりカノン、エレナ、ノウェムと増えていった。

 皆、ウルスラを信じついてきてくれる。


「それじゃあ、シエラの連絡を待ちながら、各自待機しなさい」

「おう!」

「了解!」

「りょ~」




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