20 弁解

「濡れ衣だ」

「じゃあ、どこ見てた?」

「それは……」


 二人を見る。

 男なら必然的に胸に視線が行くのは仕方のない事だが、それを言うと恐らくウルスラとエレナの逆鱗に触れる気がする。


 助けてくれ、ノウェム……。

 僕が視線を向けると、ノウェム真剣な顔で頷く。

 これで、助かった……!?

 

 そう思っているとノウェムは何を血迷ったのか、胸に手を当てて更に強調する。

 

「何してんの?」

「ん~? レウルが熱い視線向けるから~、サ~ビス~」


 こいつ、馬鹿なの?

 恐る恐るエレナを見ると、エレナは先程までの蔑んだ顔が嘘のように笑顔で僕を見ている。

 ヤバい、これは本気で怒っていらっしゃる。


「あの、エレナさん?」

「何かな?」


 顔は笑顔なのに低い声で返答してくる。

 

「誤解だって……」

「何が?」


 こうなると、ちょっと面倒臭い。

 

「ほら、いつものノウェムの悪ふざけだって……そうだよな!?」

「ん~? 私は~視線の所を強調しただけだよ~」


 ほんとに何言ってんの!

 半分面白がってるよね!!


「違うんだ、本当に」

「別にいいよ、このスケベ」

「スケベって……」

「仕方ないよ~、男の子は~大きな胸が、大好きなんだから~」

 

 もう黙れ、ノウェム!

 

「お前なぁ~、僕がそんな胸で判断する人間に見えるか!?」

「見える」

「見える~」

「うん」

「ひどくね!?」


 まさか全員に即答されるとは思ってなかった……っというか、


「お前は僕の何を知ってる」


 ウルスラに向かっていう。


「いや、お主……カリンにもそんな視線向けてたじゃない」


 おい、この魔王火を更につけたぞ。 


「向けてない! 本当だ!」

「いいのよ、嘘つかなくても」

「男の子だもんね~」


 もう嫌だ、この状況。



 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る