21 本題

「それで、何でいるんだ?」

「え~、それは~」

「トイレならここには無いから外でな~」


 モジモジしたノウェムにそう言うと、ムッとした顔で僕を見る。


「デリカシーにかけるなぁ~、それともそういう趣味とか~?」

「そういうのいいから、それより答えろ」


 こいつのペースに飲まれるといつまでたっても話が進まないので、彼女には遠回しな言い方はせず、本題に入る。


「ん~っと、今日はお願いがあってきたの~」

「お願い?」

「うん、ちょっとヤバいことになっちゃってね~。 何人か子供を預かってほしいの~」


 ウルスラから聞いていたが、未だ魔王が健在という事もあり、王国との戦いは避けられないらしい。

 僕の結んだ条約はあっさりと水の泡となったというわけだ。


「お願いできないかな~?」


 子供を危険に晒さないのならここは安全という他ならない。


「ほら、ここなら、皆安全じゃない? だから……」

「敵対関係だった私が言うのは筋違いだってわかってる」


 エレナの言葉を遮り、ウルスラがいう。

 ウルスラ《彼女》の言う通り、敵だったものに頼むのは筋違いだ。

 相容れないから戦っていたのだし、沢山の同胞の命を奪った奴のお願いなど誰も聞かないだろう。

 ウルスラは立ち上がるとこちらに向かって頭を下げてくる。


「だが頼む! どうか少しだけでいい、子供たちを預かってもらえないだろうか!?」


 魔王が頭を下げる。

 それはどういう意味を持つのか彼女自身も判った上でだ。

 まぁ、そんなことをしなくても僕の答えは決まっていた。 


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