8 勇者、落ち着いた生活を送る?

 魔王が帰り、静かな生活が始まった。

 あたりには花の匂い、草木が生い茂る土地なので自然豊かで落ち着く。

 僕はこの土地で採れた花をすり潰し、お湯を注ぐ。

 この花は毒がなく、そしていい味がして心が安らぐのだ。


「あ、わしも頼む〜」


 そう、僕は落ち着いた生活を始められる……筈だった……。

 目の前には机に突っ伏した魔王が僕の方を向き、ホットフラワー(勝手に命名した)をねだってきている。


「お前なぁ〜、魔王城はいいのかよ……」

「たまには良いじゃないか、もう敵対関係ではないのだし……」


 毎日顔を出してるじゃないか……。

 こいつは一度帰ってから毎日僕の所に来ている。

 

「毎日来ているのがたまにか?」


 要れた花湯ホットフラワーを彼女の前に差し出す。


「細かい男はモテないぞ」

 

 ウルスラは花湯の匂いを嗅ぎ、一口口に含む。

 決してモテなかったわけじゃない。

 正直、王国にいたころはモテてた。

 そして僕が勇者剥奪になった瞬間、皆離れていった。

 結局、僕がモテてたのはという地位がモテてただけで、誰も僕の事なんて見ていなかったのだ。


「それより、毎日ここにきて魔族の方は大丈夫なのか?」


 何だ、そのポカンとした顔……。

 予想してない答えだと言わんばかりに渡したばかりの花湯を机の上に零している。


「おい、なんだその眼は?」

「いや、お前が人の事を心配するなんて思わなくて」

「世間話だ、勘違いすんな」


 正直、僕に面白みを求めるのが間違っている。

 ずっと一人で魔王討伐の旅をしてきたのだ。

 そんな僕が他人に気を遣うなんて事を求めるのが間違いだ。


らしい」


 そう重々しく呟いた。

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