7 新たな生活

「勘違いするな、別に辛い体験や孤独とかそういうんじゃない……役目が交代したんだ、後は次の勇者に任せるさ……」


 これは本心だ……。

 もしかしたら傍から見たら孤独だったかもしれないが、やるだけの事はしっかり果たしたはずだ。


「もう邪魔をするつもりはない……僕はここで静かに暮らすからな……」


 ここは未開の地……かつて何千、何万とここを開拓しようとしたが、余りにも厳しいため、僕以外誰もこの地にたどり着くことができなかったのだ。

 それに僕はもう人と関わるのはうんざりなんだ。


 戦う気がなくなったのか、ウルスラは羽を消す。

 自身も魔法を解除する。

 

「それじゃあ、私達は魔王城に帰るわ……」

「そうしろそうしろ」


 ウルスラは転移魔法を使えるのである程度の場所には転移できるから魔王城には簡単に帰ることができる。

 そうして魔王が魔法を発動する。


「ノウェムはどうする?」

「僕は元気だと伝えてくれるだけでいい」


 僕は生きて隠居生活していることだけ、彼女が知っていればいい。

 それに彼女に言うとここに突撃してきかねない。


「最後にこれ……」


 ウルスラは僕になにあか石を渡してくる。

 

「それは通信魔法だ、困った時は私を頼るといい」


 ウルスラがそんな事をする義理はないはずだ。

 それに、相手は魔王だ。

 何を企んでいるかはわからんし、後で何を要求されるか分かったもんじゃない。


「お断りだ、僕はもう面倒事はごめんなんだよ」

「いいから、持っとけ!」


 そう言って僕に投げつける。

 投げるのはいいが、そんなスピード、普通なら受け取れんし貫かれるぞ。

 僕は難なく受け止めながらウルスラを見る。 


「別に使わなくてもいい、だが放っておけんのだ」

「僕はお前より強いぞ?」

「うるさい! いいから黙って受け取れ!」


 そういうと、魔王は転移して行ってしまった。


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