4 食い違い

 今まであった事を思い出すと、なんとも言えない感じだ。

 人間を救う為に頑張ったら、今度はもう要らないと言われてポイだ。

 残ったのは元勇者という肩書きと恐怖の象徴だけ、虚しいとしか言いようがない。

 僕は彼らを封印した後の出来事を話すと、魔王は僕の手を握る。


「本当に、魔族が虐げられぬ世界が実現したんじゃな!?」

「あぁ、少なくとも僕がいた時はそうだった」

「よかった〜」


 膝を折り、心底嬉しそうにウルスラは綺麗な瞳から涙を浮かべている。

 四天王も嬉しそうに涙を拭っていた。

 疑問に思った事を口にする。


「お前達は世界を滅ぼす気なのか?」

「いいや、私達は滅ぼす気もない……あいつらが勝手に攻めてきただけじゃ」


 魔王の意見を聞くと、王国と言っている事とまるで違う答えが返ってきた。


 王国の魔王軍について

 魔王が世界を手中に収め、人族を滅ぼそうとしている。

 魔王は卑劣で狡猾……。

 捉えられた人は拷問を受けた上に無惨に殺されている。

 

 魔族の意見

 向こうが攻めてくるから対抗しているだけ。

 被害が広がる前に攻め落とし、平和にしたかった。

 捉えた人間はこちらで丁重に扱い返している。


 

 と言う事らしい。

 なんとも意見がまるで食い違うというか、正反対だ。


「ところで聞きたいんだが、ノウェムという魔道士を知っているか?」


 ノウェム……王国最強の幼馴染の魔道士だ。

 彼女は三ヶ月程前に魔王軍の襲撃を受け、民を守るためたった一人で戦った。

 その後は捕虜として王国に降伏するように求めたが、王国は完全拒否……後日、彼女は遺体となって発見されたとされている。


「ノウェム? あぁ、あいつなら生きておるぞ」



 







 

 

 














 

 

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