11 シャルロッテの願い
俺はシャルロッテが引き連れている部下の素早い対応に圧倒されていると、医療所からポーションを持ったオイドが出てきた。
「大丈夫かアーノルド! ほれ、これを飲むのじゃ!」
オイドは俺にポーションを手渡ししてくる。
「すまない。頂くよ」
――ポンッ……ゴクッゴクッ!
コルク栓を引き抜き、俺はポーションを飲むと背中の痛みが徐々に消えていった。
「……マジか……凄いな、コレ」
背中を手で触っても既に痛みはなく、傷も
(……まさか、自分の作ったポーションに助けられるとは思わなかった)
そんな事を考えていると、ラミリアがいきなり抱き着いてくる。
「アーノルド! よかっタ!」
「っと、うわ! ラミリア、急に抱き着くな!」
話せるようになったラミリアは俺に抱き着きながら頭を何度もすり寄せてくる。
「……ん!? ラミリア、お主。話せるようになったのかの!」
「ウン!」
ラミリアは俺から顔を放すとオイドに向かって元気よく頷く。
「ふぉっふぉっふぉ、そうかそうか。……じゃが、中から見ておったが……一体何をしたんじゃアーノルド」
「……さぁな、自分勝手な要求を断っただけさ」
俺はラミリアの過去をオイドに伝えず適当に誤魔化す。
「……うむ、一時はどうなるかとおもったぞ」
縛られたイスラはシャルロッテに声を上げる。
「な、何故だ! 何故ここにあなたのような方がいるのだ」
「あなたが知る必要のない事です。アーノルドに危害を加える事は私が許しません。今後、このネルド村に手出しをしないと約束できますか?」
「……エリナベル王国に歯向かう愚か者はどこにもおらぬ。……もうこの村からは手を引かせて頂くさ」
「賢明な判断です。では、今回の件は不問と致します。皆さん、この者達をこの村から追い出しなさい」
シャルロッテは部下にそう指示を出すと、部下は縛られているイスラ達を村の外へと連れていく。
その者達からシャルロッテは視線を俺に移すと、俺達がいる方へと駆け寄ってくる。
「アーノルド! ……傷を負っていたようでしたが、大丈夫でしょうか?」
「……あぁ、もう
もうここは宮廷ではないので、俺は
「いえ、いいのです。……それで、この方達は?」
シャルロッテはラミリアとオイドを見て呟く。
「お、おいアーノルド! お主、まさかエリナベル王国のお姫様と知り合いじゃったのか!?」
「……まぁ、ちょっとな」
「そういった事は先に言わんかい! わ、わしはオイド・ロールと申します。この医療所に元々勤務しておりました。どうぞお見知りおきください」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は、シャルロッテ・エリナベルと申します。エリナベル王国の君主をしております」
「君主……?」
(……国王の娘、ではないのか?)
俺がシャルロッテの自己紹介に疑問を感じていると、ラミリアがシャルロッテを見上げていた。
「……キレイ」
ラミリアに気付いたシャルロッテもラミリアに顔の高さを合わせるようにしゃがみ込む。
「……ふふ、ありがとうございます。とても可愛い子ですね。私はシャルロッテ・エリナベルと申します。あなたは?」
「私はラミリア! ラミリア・スーザ―」
「ラミリアちゃんですか……でも、貴方はどうしてアーノルドと一緒にいるのですか?」
シャルロッテはラミリアの頭を撫でながらラミリアに問いかける。
「……アーノルドは私を助けてくれタ。 ……恩返しをしたイ」
「そうですか……あなたもアーノルドに救われた方なのですね」
立ち上がったシャルロッテは俺に視線を向ける。
「アーノルド。少しよろしいでしょうか――」
シャルロッテはそれから宮廷でシャルロッテのお父さんが倒れた事、バッカスが今まで宮廷で行ってきた数々の悪行を暴き、宮廷から追い出した事を俺に教えてくれた。
「――といった事情で、アーノルドにお父様を治して頂ける可能性を信じてお父様と一緒にこのネルド村まで来たのです」
「……なるほど、いろいろ頑張っていたんだな」
(あのバッカスの糞野郎が……ふん、いい気味だ)
そんなことを考えていると、ネルド村の村長が駆け寄ってくる。
「アーノルド! 村の者達から聞いたぞ。よくぞこのネルド村を守ってくれた!」
「いや、俺は何もしてないさ。助けてくれたのはシャルロッテだ」
俺はシャルロッテを村長に紹介する。
「なんとっ! エリナベル王国の姫君がこのような村にお越しになってくださるなんて……!」
村長はシャルロッテを拝むようにお礼を伝えていた。
俺は拝み倒す村長を横目にシャルロッテに尋ねる。
「それで、このネルド村に来た目的だけど……すぐにお父さんを見せてくれるか?」
「はいっ! こちらです、付いてきてください!」
俺は村長にお別れを告げてシャルロッテに付いていこうとすると、ラミリアが服の裾を掴んでくる。
「……ん~!」
「なんだ、お前も行きたいのか?」
「ウン!」
「わかったよ。それじゃラミリアも付いて来い」
俺は喋るようになったラミリアに微笑みかける。
「ふふ、ラミリアちゃんはアーノルドにとても懐いているみたいですね」
「何故か知らんがな。……で、お父さんの所へ案内してくれるか?」
「はい! こちらです」
俺とラミリアは、シャルロッテに連れられてネルド村の外に待機していた豪華な馬車へと案内される。
中に入るとシャルロッテのお父さんであるギルバートが横になって目を瞑っていた。
「……お父様はネルド村に到着する少し前から寝てしまっているのです」
「そうみたいだな。……ちょっと、見せて貰うぞ」
表情を見ると、既に息も絶え絶えで非常に苦しそうなのが分かった。
(……どうやら危ない状況みたいだな)
俺はすぐにギルバートの体内を女神の祝福を受けた目で透視し、体内の状態を確認する。
「……っ!?」
(生きているのが奇跡に近いな……)
確認した結果、ギルバートの心臓は既に鼓動を止めようとしていた寸前の状態だというのがわかった。
俺はすぐさま心臓部に右手を添えて――
『リザレクション!』
――最大級の蘇生魔法を行使した。
するとギルバートの止まりかけていた心臓は活動を再開し、次第に落ち着きを取り戻して表情も健やかなものに変わる。
「……ふぅ、シャルロッテ。……もし、あと少し遅れていたら、シャルロッテのお父さんは助からなかっただろう」
「っ!? ……アーノルド、お父様はもう大丈夫なのですか!?」
心配そうに俺を見つめてくるシャルロットに微笑みかける。
「……あぁ。シャルロッテがここまで連れてきてくれたおかげだ。よく頑張ったな、シャルロッテ」
俺は不安な表情を浮かべるシャルロッテに笑顔で語り掛ける。
すると、緊張の糸が切れたのか、シャルロッテは目に涙を浮かべる。
「うぅ……ありがとうございます! 本当に――」
――ギュッ!
シャルロッテはそう言うと、俺に抱き着いてくる。
「な、なんだよ急に!」
俺が驚いていると、ラミリアがシャルロッテの服を引っ張り俺から
「ん~~!! アーノルドにくっつかなイ!」
「……はっ! も、申し訳ありません」
我に返ったシャルロッテは瞬時に俺から離れて俺とラミリアに謝ってくる。
「いや、気にしないでくれ。……それはそうと、シャルロッテのお父さんもすぐ目を覚ますと思うから安心するといいよ」
俺がそう伝えると、シャルロッテは涙が残る顔に笑みを浮かべる。
「ふふ……なんだか以前に同じやり取りをした気がしますね」
「ん? ……あぁ、そんな事もあった気がするな」
俺はシャルロッテと初めて会った日の事を思い出して、シャルロッテに釣られてほほ笑み返す。
「ん~っ! ……二人で楽しそウっ!」
「おっと、すまんすまん」
一人だけブスっとしているラミリアの頭を撫でながら俺はシャルロッテに尋ねる。
「それで、これからシャルロッテはどうするんだ?」
俺は素朴な疑問をシャルロッテに尋ねるのだった。
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