供述
フジセ リツ
第1話 夫の供述 4月28日付
これから妻の美紀子が自宅から突然いなくなったことについてお話いたします。
私は、先ほど申し上げたN県I市に妻美紀子、長女サヤカの3人で、8年前に購入した一軒家に住んでいます。
まず、私は、O府の私立K大学卒業後、住宅メーカーである矢島住宅株式会社に就職し、現在はO営業所の営業課長として勤務しています。私の主な業務は、会社で造成した住宅地に新築住宅を建て一般向けに販売することです。現在は、Y市内に新しく造成した現場を担当しています。
平日は午前7時30分に自家用車で出勤します。営業所に行くことが多いのですが、新築の進捗状況を確認するため現場に直接行くこともあります。仕事を終えるのは、お客様の営業周りで遅くなることもありますが、午後8時頃です。週末は休みではありません。土曜日、日曜日は造成地でお客様をモデルハウスをご紹介することが多いのです。休みは、水曜日が定休で、他の曜日に1日休みを取ることができますが、営業課長という立場であり、部下の営業に付き合うことも多く、水曜日以外に休みを取ることはありません。
これから妻の美紀子についてお話いたします。美紀子とは、私が就職して3年たった平成23年頃、同僚の紹介で知り合い、約2年交際し、私が27歳、美紀子が24歳で結婚しました。美紀子の出身は九州のM県で、雑貨店の両親の下に生まれたと美紀子から聞いています。私と美紀子が知り合った頃、美紀子と両親はすでに疎遠となっており、私は一度も会ったことはありません。疎遠になった理由は、はっきりとはわかりません。結婚する前か後だったか美紀子が実家を出て働くことに反対されたと話していたことがありました。
美紀子の親族とは連絡もつかない状態でしたので、結婚式も友人、私の親族は呼ばず、二人だけでハワイに行き、式を挙げました。美紀子は、初めての海外ですごく喜んでくれました。今でも美紀子がパスポートを何度も取り出し、まじまじと見つめていたことを思い出します。美紀子は、私と知り合った頃、食堂の店員として働いていました。食堂は、国道沿いにあるトンカツで有名なTという店です。同僚がよくこの店に通っていて、同僚とこの店に通うようになり、美紀子と知り合ったのです。同僚は美紀子と趣味が合い、食堂以外でも会うことがあり、連絡先を教えてもらい付き合うようになったのです。美紀子は、身長150センチと小柄で華奢な体型で、黒髪のショートヘアで、若く見えます。知り合った時も中学生位にしか見えなかったのですが、年齢を聞くと成人を過ぎた22歳でびっくりしたことを覚えています。現在でも、体格や風貌は変わらず、大学生に見られることがあると話していました。私と知り合った頃、美紀子は、皆からサツキと呼ばれていました。結婚をする時に、M県から美紀子の戸籍謄本を取り寄せると、氏名は、サツキではなく、田中美紀子と記載され、美紀子に問い質したことがありました。美紀子は、涙ながらに、「実は本名の美紀子だと、親戚にもし、知られた場合、田舎に連れ戻されるかもしれない。親戚には、ヤクザのような人もいる。本名は名乗りたくても名乗れない。サツキは、アニメの主人公からもらった。サツキの名前を気に入っていた。本当の名前を言えなくてごめんなさい。これからは木田美紀子で生きていく」と話しました。私は、美紀子がサツキという名前ではないことにショックを受けましたが、私の木田姓を名乗り、本名の美紀子として生きていくことが嬉しくもありました。高校の途中で、田舎から出てきたらしいので、美紀子は学歴的には中卒となります。こちらに出てきてから中卒なので、良い働き口はなく、転々として苦労したとこぼしていました。食堂の前は、ホテルの清掃やクリーニング店で働いていたと話していました。美紀子は食堂の看板娘でしたが結婚して辞めることにしました。それからは主婦となり働きには行っていません。美紀子の趣味は、登山です。近くの山に出かけることが多く、ハイキングに出かけています。同僚ともハイキングが趣味で意気投合したようです。私は仕事で家をあけているのでわかりませんが最近も週1日程度出かけていたようです。今回、妻がいなくなった時にもハイキングに使うザックがなくなっていました。もしかしたらハイキングに出かけたのかもしれません。同僚は、すでに会社を辞めているので付き合いはありません。
家の中からなくなっているのは、ザックのほか、スマホ、財布、妻名義のクレジットカード、キャッシュカードつです。現金はいくら持っていたのかわかりません。私と美紀子との関係は、仲がよい方だと思います。休日に二人で買い物に出かけることもあります。
私の趣味は、ゴルフで、仕事帰りに打ちっぱなしに行ったり、月2回程度仕事の関係先とホールを回ります。ゴルフの腕前は、ハンデ10くらいです。
長女のサヤカは、美紀子の連れ子です。現在、16歳で、私立s学院高校の2年生です。美紀子と結婚して、養子縁組し、私の姓を名乗っています。
サヤカと私との関係は、実の親子のように仲が良いと思います。サヤカは、陸上部に入っていますが、学校の帰りが遅くなった時には、駅まで迎えに行くこともあります。
美紀子には、一刻も早く家に帰ってきて欲しいです。
供述 フジセ リツ @sfz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。供述の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます