第23話 事件発生

 金時の件が一段落し、お屋敷の中もすっかり普段通りに戻りました。あれほど流行っていた「男の子の母のマネ」ももう誰もやっていません。調理係のお手伝いがエプロンを腹かけのように着るのはまだ少し流行っているようです。


 そんな平和なお屋敷の中で、一人あわあわと早歩きをする女がいました。なんとあの椿です。珍しく髪の毛が乱れていて、額に脂汗もかいています。



「姫様、近頃お屋敷の中で陰湿ないじめが起きているとのことです」



 かぐやの部屋の襖をぱんっと開け、椿が言いました。今日のリップを選んでいたかぐやは驚いて、思わず紅色を落としてしまいました。



「いじめなんて低俗なもの、一体誰が」



「はい。それがあの梅子なんでございます。いじめられている睡蓮は可哀そうに毎日泣いています」


「まぁあの梅子? きっと美しい睡蓮を妬んでいるんだわ」


「どうなんでしょう。いかがなさいます? 早速梅子に話を聞きにいきましょうか?」


 そういわれると、かぐやは「うーん」と頭に人差し指を当て、考えるポーズをしました。






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