第22話 男の子と母
「んで、椿はどうなのよ。ヤマさん」
かぐやが聞くと、椿は不適な笑みを浮かべました。言いたいことが沢山あるのだが、その中の「言っていいこと」があまりにも少なすぎるみたいですね。椿はいつも通り冷静に、かつ麗しく言葉を選びました。
「ヤマさんはお話上手な方でした。初対面二人きりで話していても飽きないんです。
何というか、向こうが話してくれるので私はほぼ聞いているだけでよくて……。
いやでも、リアクションがないと小突かれるんですけどね」
「へぇ、それでそれで」
かぐやは身を乗り出して聞いた。椿の「何かを隠している顔」を見逃しません。
「金時様のことも溺愛してしてらっしゃるようでした。
あんなに愛されて、金時様もさぞ幸せでしょうね」
それでもかぐやは身を引きません。椿の最後の言葉を引き出そうとしているのです。椿は「こほん」と口元を隠して咳払いをしてから、大きく息を吸いました。
「まるで、小さな男の子を育てている母親のようでした」
それを聞くと、かぐやは満足そうに頷きました。それからあの男の子と母親についての「おはなし」に大層大きな花が咲いたそうです。
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