第20話 女の結束

 「ごめんなさい。椿にもお琴の準備手伝っていただかないと。


ほら椿、来なさい」



 凛と澄んだ顔で、かぐやが椿を手招きしました。先程金時と二人きりのチャンスを作ってくれたお礼です。椿のおかげで彼の本性を知ることができました。いつもは文句を言い合っているような二人ですが、こういうときは戦友になるようですね。


 椿は嬉しい顔を必死に抑えて立ち上がります。



「ヤマさん。続きは今度でもいいでしょうか。またお越しください」


 物足りなさそうな顔をしているヤマを後目に、二人は部屋に出ます。お互いに目を合わせると小さなガッツポーズをしました。



「あ、すみれちゃん。ヤマさんと金時様の帰宅の用意をお願い。私達はお琴をしていると伝えて」



 椿が近くに歩いていたすみれを呼びとめました。彼女も椿と同様にお屋敷のお手伝いさんです。椿よりも若く、まだまだ新人です。



「かしこまりました。ではお琴の部屋のセッティングも手配しましょうか」



 さすがはすみれ、気が利きます。



「「あ、それは結構よ」」



 椿もかぐやも口を揃えました。すみれは最初は驚いていましたが、合点がいったのか、ニコっと可愛く笑いました。



「かしこまりました」



 すみれの後姿を、二人は微笑みながら見ていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る