第16話 二人きり

「二人きりだと緊張していまいますね」



 金時は俯いたまま何も話さないので、しょうがなくかぐやが口を開きました。金時は、ヤマがいたときとは雰囲気が違う気がします。まるでクラスで一番足の速い野球部の男子が、赤点のテストをつきつけられたときのようです。もちろん、かぐやは野球部も赤点も知りませんが。



「何の話をしましょうか」



 かぐやが聞いても、まだ彼は黙っています。腹かけをいじったり、無精ひげをねじったりして、話す気がないのでしょうか。


「今日はいい天気ですね」



 外で、ちゅんちゅんと小鳥が鳴いています。かぐやには名前が分かりませんが、緑色の綺麗な鳥です。もう、あっちと会話をした方が楽しい気がします。



「お母さま、素敵な人ですね」



そう言ったとたん、金時がパッと勢いよく顔を上げました。

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