第9話 確変⁈

 椿は今日も頑張ります。お偉いさんの屋敷に行ったり、結婚したがっている人がいないか調査したり、結婚相談所の担当さんとお話したり。とにかく思いつく手は全て試しているのですが、どうにも上手くいきません。


 なんせ「帝を振った女」として有名になってしまっているのですからね。


 夕方になり、今日もまた姫様に嬉しくないご報告をしなくてはなりません。椿は重い足取りでお屋敷に戻ります。その前にお手紙でも来ていないかチェックしておきましょうか。



 「姫様、大変です」



かぐやが自室で侍女に髪を梳かせていると、大慌ての椿が息を切らしながら走ってきました。



「どうしたの、そんなに急いで」


「姫様に求婚したいという殿方が現れました」



 椿の言葉にかぐやはもう大興奮です。不自然なほどに口角を上げて、部屋の中をぐるぐると歩き始めました。


「杏、すぐに調理場に行って食事の準備を。肉も魚も鮮度のいいやつをね。桃ちゃんにはお化粧を頼もうかしら。あんまり赤すぎる口紅はよしてね。それに鈴蘭は庭から良い感じの花を摘んできてちょうだい。この部屋を良い匂いにしましょう」



 椿はこれほどまでにテキパキとしているかぐやをみたことがありませんでした。



「殿方が暇にならないよう私が詠んだ和歌でも紹介しておいてくれるかしら。傑作集の中のだけでいいから」


「はい。承知しました」



 威勢よく返事をした椿は再び小走りで部屋を出ていきました。



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