第10話 帝越えの旦那?

「殿方が入られます」



 襖が開いた音がして、どたどたと足音が聞こえてきます。



「どうぞこちらへ」



 椿がそう言うと、足音は止まりました。簾の奥、何やら動いている影が見えます。顔はよく分かりませんが、かぐやにはもう素敵な男性にしか見えません。



「こちら坂田金時様です。有名な武士で最近も京で大きな事件を解決したんだとか。巷では神の子なんて呼ばれております」



 「神の子」そう聞いてかぐやは思わず声が出そうなほど喜びました。まさか帝を超える存在が現れるなんて思ってもいませんでした。なるほど、だから「帝を振った女」に挑もうと思ったわけですね。もはやかぐやの旦那さんは、この人しかなれないのではないでしょうか。


 それに貴族ではなく武士というのも、何だか格好いい気がします。かぐやにやにやしながら、ダンディーな姿を想像しました。



「初めましてかぐやさん。いやぁ美味しいごはんに素敵な和歌まで読ませていただいて、嬉しいかぎりでごぜぇます」



 ずっしりとした野太い声が簾の隙間から聞こえてきます。彼女のタイプである細見の男性ではなさそうですが、武士ならばがっちりしていた方が良いとかぐやは思いました。いや、正直久々の縁談なので、相手がどうであれもう今回で決めてしまおうと思っていたのです。

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