第6話 難攻不落

 かぐやに求婚する者がいない理由、それはただ一つです。


 彼女の過去を思い出してください。この国の名高い殿方を全員振って、帝まで振ったのです。世間から見た彼女は「帝を振った女」。攻略難易度最高値ですよね。


 万が一彼女に受け入れられたとして、帝を差し置いて結婚するなんてとんでもありません。だから、どんなにかぐやが美しくとも手を出そうとする男はいないのです。椿がありとあらゆる人脈を利用して縁談を持ち込みますが、皆口を揃えて「私なんて」というのです。


 次第にかぐやは焦ってきました。そしてある日、椿に相談しました。


「ねぇ、もしかして私このまま一生一人なんじゃない?」


「いやぁまたまた。何を仰いますか」


 椿は笑って激しく顔の前で手を横に振りました。しかしその手が震えていたのを、かぐやは見逃しませんでした。


 それでもかぐやは諦めません。彼女はどの星、どの時代に生まれても思うことは一緒です。「愛している人から愛されること」それ以上の幸福はない、と。


 確かに、結婚をしなくても人生楽しく生きることはできるかもしれません。翁と媼に愛され、お屋敷の人達と仲睦まじく毎日を過ごせば、瞼が降りるその瞬間まで笑顔でいることができるかもしれません。


 それでもかぐやは確信しています。必ずや「結婚してたらな」と公開する瞬間が来ることを。


 とにかく彼女は、結婚がしたいのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る