第5話 乙女の心

 かぐやは、月から帰ってきて言いました。


「私、月で婚活に失敗したの」


 彼女はにへっと笑っていましたが、そのぎこちなさったらありゃしません。お屋敷の皆はすぐにあわあわとフォローに回りました。


「大丈夫ですよ。地球には良い人沢山いますから」


「姫の魅力が分からないなんて、月の男も遅れてますね」


「今日はぱぁっとやりましょう。ね」


 しかし腫れ物に触るようなその態度は、乙女の心を更に傷付けてしまいました。


「うん、皆ありがとう」


 ハイライトの無い目でそう言った後、自室に閉じこもってしまいました。椿が五時間も慰めて、ようやく顔を出したと言われています。


 それから、椿は大急ぎでかぐやの結婚相手を探しました。彼女は23歳。まだ十分結婚できる歳です。

 それに、あの美貌の持ち主です。絹のような長い黒髪。まん丸お月様のような大きな瞳。桜色の薄い唇。椿の教育のかいもあって、マナーだってしっかりしています。


しかしどういうことでしょう。彼女に求婚する者は、まだ現れていないのです。

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