第3話 住みやすい国、日本

 かぐやが住んでいた月というのは、随分と文明が進んでいます。

 便利な携帯端末を皆が所持していたり、長い言葉は略しがちですし、いかなる差別にも厳しいです。

 そんな進んだ場所から来たかぐやは、この国が随分窮屈に感じました。まるで、800年前の月を見ているようです。


 かぐやは良くも悪くも欲に忠実ですから、そんな状況に我慢できるはずもありません。月から帰ってきてから、早速日本中の技術者と知識者を集めセミナーを開きました。最初は訝しげにする者も多くいましたが、「かぐや姫」というネームバリューのおかげか、賛同してくれる人が殆どでした。

 それから、日本は目まぐるしい進化を遂げました。月には及ばないですが、皆随分と生きやすくなったそうです。


 ここで、少し変わったところを紹介しましょう。乗り物が増えただとか、食料の生産量が増えただとか、そういう細かいところを挙げていくと、日が暮れてしまいます。

 ですから、かぐやの周りのことだけを紹介しますね。後のことは、そんなに焦らずに、後々、ということで。


 まず、かぐやが住む家についてです。彼女は高層マンションに住んでいます。嘘です。

ここはまだ、寝殿造りなのです。というのも、かぐやはのびのびとしたこのお屋敷が好きなのです。


 そして、かぐやの周りの人についてです。このお屋敷には、かぐやの身の周りのお世話をする人が沢山います。今までは「侍従」とか「女官」などが存在しましたが、もうそんな面倒な呼び方はやめました。皆、あだ名がついています。これはかぐやがつけましたので、何故か全員花の名前になってしまいました。


 また、先述した通り言葉も大分変わりました。月で日常的に用いられていた言葉が使われます。また、進んだ教育も取り入れてたので、識字率も非常に高いです。元々男性が漢字を、女性が平仮名を使っていましたが、どちらを勉強するかは、自分の好みで選べるようになりました。と言っても、完璧にどちらも使いこなせる人はまだごく少数ですがね。


 こんなに快適になった平安時代の日本ですが、かぐやには一つ深刻な悩みがあります。

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