第2話 かぐやのいる世界
「ちょっと椿、魚は生がいいって言ったじゃない。この干物とかムニエルとか、火が通ってる魚だとテンション上がらないのよね」
かぐやに言われ、椿は「申し訳ございませんね」と固まった笑顔で頭を下げます。しかし、干物を下げるようなことはしません、かぐやもそれを分かっていて、仕方がなくお箸を持って腹の方から身をえぐります。
「日本には美味しい海産物が沢山あるのにもったいないじゃない」
「そうですね。特に春は旬の魚も多いですし」
「鯛とかいいんじゃない?」
「何かおめでたいことがあれば、用意しましょうか」
椿は何か含みがあるような言い方をしたので、かぐやはキッと彼女を睨みました。椿は一応謝りましたが、口角は上がっています。
二人の言い争いは、このお屋敷の中では特段珍しいことではありません。
かぐやが月から帰ってきてからというもの、お屋敷の中は随分変わりました。翁と媼しかいなかった時は活気がありませんでしたが、今では、何と言いましょうか、「情緒あふれる」なんて表すのがいいのかもしれません。決して「うるさい」と言っているわけではありません。
そして、変化したのはこのお屋敷の中だけではありません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます