かぐやの旦那探し

@sunf

第1話 月から帰ったかぐや

 それは、まん丸満月の夜のことでした。


 屋敷は青白い光に包まれます。とてもこの世のものとは思えないほど眩い、壮大な光です。しかしこれは、初めてのことではありません。


月の中央、黒い点のような何かが見えます。点は次第に大きくなり、やがて輪郭を表します。

何やら楽しそうな音も聞こえてきました。太鼓と笛と、あの、掴みどころのない音は一体なんの楽器なんでしょうか。これもまた、聞き覚えがあります。


 屋敷の人間は皆外に出て、目を輝かせました。自分が無力であることを知らされるような大きな存在の前に言葉をなくします。誰も何も言いませんが、分かっています。今何が起こっているのか、を。


 翁と媼は、重い布を引きずりながら、一歩、また一歩と月に向かって歩きます。夢にもみなかった瞬間を、ついに今迎えようとしているのです。


そう、月からかぐやが帰ってきたのです。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る