第4話
こうして、初めて作曲をすることになったものの、どこから始めればいいのか、さっぱり分からない。
取り敢えず、インターネットで作曲の仕方を検索してみよう。
曲を作る際、歌詞から作る方法と、メロディから作る方法があるらしく、歌詞から作れば歌詞に合ったメロディを作ることになり、メロディから作ればメロディに合わせた歌詞を作ることになると、どちらがいい悪いではなく、人それぞれやり易い方法で作っているらしい。
うーん、どっちがいいのかな。
いいメロディが浮かべば、それに歌詞を付ければいいんだろうけど、取り敢えず歌詞を作ってから、それに合うメロディを付けた方がやり易い気がする。
よし、まずは歌詞から作ってみよう。
題材はどうしようか...
僕には愛だの恋だのは分からないし、ノリのいい歌詞とかもムリそうだし。
あ、そう言えば3年前にバイクに轢かれて死にかけたときにちょっと不思議な体験をしたな。
その時の体験を基に歌詞を作ってみようかな。
3年前の12月、いつものように残業で遅くなり、夜の12時頃に自転車で交差点に差し掛かり、赤信号を青になるまで待っていた。
寒かったので手がかじかみ、早く帰りたいとちょっとフライング気味に、でも青信号を見てから飛び出した時、右側から何やら光が点してきて、右側を見ようとした途端、右脚の踝に衝撃を感じて、そのまま吹っ飛ばされた。
後ろ向きに飛ばされている最中、時間がゆっくり流れて、「またやっちまった!ここで右手にケガをしたら年賀状が書けなくなる!それよりも明日の(バドミントンの)試合に出られなくなる!というか、打ち所が悪ければ死んじゃうかも!」と一瞬の内にいろんな考えが頭に溢れた。
そのまま3m位空中を舞って、腰から道路に落ち、ずざざざと滑った。
痛ててて。
信号無視をしたバイクに横から突っ込まれたらしい。
幸い頭は打っておらず、右脚に痛みがあったものの、大怪我ではなさそうだ。
逆にバイクの人の方が倒れたままになっている。
「大丈夫ですか?!」
向かいのコンビニにいた人が近くまで来てくれて、助け起こそうとしてくれた。
そんな事故を傍らに見つつ、邪魔だなとでも言いたげに横を通りすぎるクルマたち...
コイツら!轢かれたことよりも、そんなクルマたちに怒りを覚えた。
それからバイクに乗っていた人と一緒に救急車に乗せられ、近くの病院に連れていかれた。
今夜はレントゲン技師がいないということで、骨については明日また確認することになったが、右脚ふくらはぎの肉離れだけのようだった。
それから家まで右脚を引きずりながら歩いて帰る途中、自分の心の中に声が聞こえてきた。
「お前生きててよかったなあ。下手をすれば死んでいたよ。助かったってことは、何か使命があるってことだ。そしたらやるしかないよなぁ!」
ブワ!
涙が溢れてきた。
生きててよかった!
何か分からないけど、これからきっとやるべきことが見つかるんだと、その時確信した。
きっと僕にしかできないことが現れるんだ!
それまで一生懸命がんばろう!
僕は真夜中に嬉しくて泣きながら、そして脚を引きずりながら家まで約3km歩いて帰った。
誰の声か分からないけど、今まで何のために生きているのか分からなかった自分を、一気に前向きにしてくれた。
その時の声のことを歌にしよう。
普段は見えないけど、いつも見守ってくれていて、いざというときには、助けてくれる。どんな時も僕の味方でいてくれる。守護霊みたいな存在かな。
どんな人にも必ず心の中にいる。
だから、夢に挫けそうなときも、絶望で死にたくなったときも、悲しみで心が壊れそうになったときも、誰も信じられなくなったときも、必ず自分を応援してくれる。
絶対に裏切らない、自分の分身。
そんな人生応援ソング。
よし、何となく歌詞の方向性は決まった。
メロディの方はどうしよう。
取り敢えず、スマホを使って、五線譜に音符を並べていくと、その通りに演奏してくれるアプリがあったので、ダウンロードしてみた。
適当に音符を入れてみたけど、全くまともなメロディにならない。
先に頭の中でメロディを考えてから、それを再現するように音符を並べてみようとするけど、なかなかイメージ通りに再現できない。
鼻歌を録音して、それを自動的に音符のデータにしてくれるというアプリもあったけど、テンポを合わせるのが難しくてまともに使えなかった。
やはり、何か楽器がないと難しいのかな?
でも、ギターは全く弾けないし、鍵盤も一音ずつしか弾けない。
あ、でもメロディを作るには一音ずつ弾ければいいのか。
パソコンに繋がるミニミニ鍵のキーボードならそんなに高くないかも。
ネットで調べると1万円もしない値段でUSB接続のキーボード(aoi mini 25鍵)が見つかった。
取り敢えずこれで試してみよう。
早速ネットショップでポチッて、そのキーボードを購入した。
無料のDTM(Desk Top Music)ソフトをインストールして繋げてみると、果たして音が鳴るようになった。
音符を並べるよりは直感的にメロディが作れそうだ。
よし、取り敢えず準備は整ったかな。
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