第34話 魔法陣

 洞窟の奥に進むにつれて分岐が増えてくるが、勇者の地図に従って進んで行く。


洞窟のつきあたりに在ったのは魔法陣だった。


「何の魔法陣かな?」


「こ、これはミケレスの古代文字です」

「えっ」


「どういう物か判りますか?リアさん」

「詳しく見てみます。ちょっと待って下さい」



リアさんはアイテムBOXから本を取り出して調べ始めた。


「……これはおそらく転移用の魔法陣だと思います」



「転移ですか……何か呪文が必要です?」


「いえ、自動式だと思いますので中に入れば起動するはずです」


「行き先は何処の可能性が有ります?」

「……一番高いのは狭間の世界……」


「ミロウク、行く気?危険じゃない」

「リアさんは行った事が有りますか?」


「残念ながら有りません。記述された資料は有りますが」


「どんな所って書いてあるのでしょう?」


「この世界とあまり変わらないみたいです。魔物がいるところも同じ様な物ですが、空の色は薄い紫で魔物以外の生き物は居ないようです」



「人が居ないのか。ダンジョンは在るの?」


「洞穴とかは在るようですがダンジョン化はしてないみたいです。ただ魔物を倒せばアイテムをドロップする事もあるとか」


「そう何ですね、……奴らを倒す手掛かりが欲しいので多少無理をしても狭間の世界に行ってどんな所かみたいのですが」


「私はミロウク様に従います」


「う~ん、ダメと言っても聞きそうにないわね。解った、行きましょう」


「2人ともありがとう」



少し怖いが興味もある。ドキドキしながら魔法陣に入った。


目の前に見えていた物が流れたかと思うと次の瞬間景色が変わった。


「無事に転移したようですね」


足下には前と同じ魔法陣が在る。


「これに入れば帰れるみたいだ」

「一安心ね」


直ぐ近くに明かりが見えるので、歩いて行くと外に出た。


「本当に空が薄紫だ」

「少し暗く感じますね」


出てきた所を見ると祠の様になっていた。山も木もあって、空の色以外は確かに変わらないようだ。



「魔物の気配は有りませんね」


「安全だと判ったし、近くを探索して今日の所は戻ろうか」


「「はい」」



歩き出すとリスバティのバックからシュエネが飛び出し飛んで行った。


「どこに行くのかしら?」

「……」


「珍しいんだよきっと、直ぐ戻って来るさ」



気長に待つ事にして辺りを観察する。


「特に何もないですね」

「奴らを倒せる魔道具でも落ちてないかな?」


「虫がいいわねミロウク、そんな都合の良い話しが有るわけ無いでしょ」


「そうだけどさ」


「あっ、シュエネが帰って来た」


「何か咥えてますね」


リスバティの肩にとまったシュエネを観ると、緑色の結晶を咥えている。


「何かしら綺麗ね」


どっかで見たことの有るような……。



あっ、俺が勝手に使ちゃった、あの部屋にあった超高級魔道具だ。……まてまて、この世界に有ると言う事は、あれはこの世界のアイテムか?


ん、ん、この世界のアイテム→勇者の地図→あの部屋は勇者の部屋→あの紫の結晶は勇者の物


おお、繋がった。あれは勇者の遺産と言う事になる。逃げなくても良かったじゃん。……そうか勇者の遺産だったのか。


と、するとだ、それを触ると……。


「あっ、リスバティ……」

「なに?ミロウク」


もう手に持っている。結晶は消えてない。


「何か変わった事は?」

「別に無いわよ」


「そうか」

「綺麗だから首飾りにしようかな」


「似合うと思いますよ」

「リアさん、ありがとう」


違うのかな?


「シュエネも帰ってきたし帰ろうか」

「「はい」」




ーーーー



「狭間の世界に転移する魔法陣ですか?」

「凄い物が有りましたね」


「良い方向に進んでくれるといいけど」




エルフと神聖国グレコトスの連合軍が王都に進軍を開始したとの連絡の報せが有ったのは翌日の朝だった。



「とうとう始まったか」

「どうなるのでしょう?」



マドレスに連合軍が集結してるとすれば、2日後には決着がつくはずだ。



落ち着かない時間がゆっくりと過ぎて行く。



ガデオンのギルドから鳥従魔のラギュウスが手紙を持ってきた。



「何て書いて有ります?」


「……2体の魔人になす術もなく全滅したそうだ」


「そんな」


「2体の魔人とは、ザリエカとモディクオの事でしょう……」


「ガデオンに行って来ます。2人はここを頼む」

「「はい」」




ーーーー



「ミロウク、やはり大変な事になったな」


「何とかしないと」


「この状態でデモニアスが復活して、我らで勝ち目が有るか?」



「……それは、何とも言えません」




        ☆☆☆☆☆



「これで暫くは愚かどは攻めては来ないだろう。デモニアス様の復活も近い。お前達は、まだ探して無い西と南の神殿を探し出し、ラバブウとハアルビスを連れて参れ」



「畏まりました」



ククク、もうすぐこの世界は私の物になる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る