第33話 惨劇
リアさんが提案してくれた精霊の剣は、様子をみる事にした。エルフの国への往復はかなりの長旅になるので、いろんな状況が気になって無理だと判断した。
邪神達が寒さに弱いと言う事は、ガデオンのギルドマスターに話して何か対応策を考えてもらう。
俺自身も国内の整備や地下神殿に関して、侵入者感知の魔道具や俺の不思議なスキルを利用してリアさん達と、いろんな魔道具を作れるようにやってみるつもりだ。
☆☆☆☆☆
「頭、商売も上手く行って親御さんの仇も討てたし、これからどうします?」
「そうだな、……少し前に会ったツィガナーの人達を覚えているか?」
「ええ、彼らの大国様が現れたってんで、急いで西の端に行くって言ってました」
「俺は子供の頃から父さんに、ツィガナーの人達がいかに凄いか聴かされて来た。その人達が認める人なら会ってみたい」
「じゃ、西の端へ行くんで?」
「ああ、行こうと思う。皆、ついて来てくれるか?」
「当たり前でしょ。なあ、お前達?」
「「「おうよ!」」」
☆☆☆☆☆
「そなたはあの時の預言者!」
「お久しぶりです御座います。陛下」
「どうやってここに?皆は何をしておる。誰か!」
「無駄で御座います。もう、まどろっこしい事は、お仕舞いに致しましょう。私はこの王都が欲しいのです。出来れば美しいこのまま、そっくりそのままで。3日間だけ猶予を差し上げます、出て行って下さい。さもなくば、今日以上の惨劇が起こるでしょう。では」
「何を…………まさか……」
部屋を出たエルフ国王が見た物は、血塗られた壁、兵士と騎士達の死体の山だった。そして城の中で生きていたのは自分だけだったのだ。
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「ミロウク様、ガデオンのギルドから使いの方が見えました」
「分かりました」
良い魔道具でも出来たかな?しかし使いの人の雰囲気が暗い。良い知らせではないのか?
「ミロウク様、ギルドマスターが直ぐに来てくれと申しております」
「何が有りました?」
「詳しくはギルドマスターがお話しすると思いますが、エルフの国の王都が預言者によって奪われたそうです」
「何だって!……ガーマの奴……直ぐに行きます」
「ガーマが何をしたの?」
「エルフの国の王都が奪われたそうだ」
「なんて事……」
「デモニアスを復活させる準備が出来たのかもしれません」
「くそっ、とにかくガデオンに行ってくる」
「分かりました」
ーーーー
ギルドマスターの部屋に入ると、マスターのグルマさんの他にギルバルド伯爵とビトゥーさんがいた。
「ミロウク、大変な事になった」
「大体の事は聞きましたが、国王は無事なのですか?」
「国王は無事だが、当時城に居た者は全て殺されたらしい。街の人達は近隣の街に避難している。国王はマドレスの街にいるそうだ、続々と各地の騎士と兵士が集まって来ると思われる」
「本当に大変な事になりました。どうなるんでしょうか?」
「ガーマは侮れん。ミケレスの末裔ともなれば尚更だ。これでデモニアスが復活したらと思うとな」
「阻止は難しいのだろうな?」
「正面切ってガーマの奴が来たと言う事を考えれば、おそらく」
「魔王が鳴りを潜めている事は関係しているのでしょうか?」
「判らん」
「ここからでは何もする事はできんのが残念だ」
「いざと言う時の為に体制を整えておく事しか出来ないのか……くそっ!」
ーー
エルフの国へ行くべきだったか?それから10日ほど経ったが事態に変化は無かった。
「おそらく何らかの準備が必要なのでしょう」
「何も出来ないのは悔しいですね」
「エルフの国王も早計な事をしなければ良いですが」
「あの国王であれば大丈夫だと思います」
「ミロウク様、商人の小隊が暫くこちらに逗留したいと来ていますが?」
「そうなの?別に構わないけど、会ってみようか」
旅人や商人の人達が泊まれるように造った施設に行くと、ツィガナーの人達と親しげに話しをしている商人がいた。レイオスさんもいる。
「レイオスさん、お知り合いですか?」
「あっ、ミロウク様。バレイシル王国で商売をさせてもらっていたロッサリィ商会の人達です」
「ロッサリィです。宜しくお願い致します」
「よく来てくれました。好きなだけ居て下さい、でもここに来るまで大変ではありませんでしたか?」
「はい。エルフの国の事で各国がどう対応するかを模索しています。神聖国グレコトスは全面協力する事にしたそうです。ゾロイツェンとマゼーレ王国も協力するでしょうから包囲網が出来ると思います」
「そうですか」
「取り合えずは良かったと言えそうだ」
「何とかガーマを抑え込みたいものね」
その後俺達は、西の地下神殿の警護をどうするか決める為に、もう一度辺りを調査する事にした。
「あそこの岩山を利用出来ないかな?」
「そうですね、考えてましょう」
「ミロウク、ここにも洞穴が有るわよ」
「ホントだ」
「怪しい気配は無いようですね」
「俺も感じないし、リアさんが言うなら間違い無いだろう、入ってみようか」
「トーチ!」
普通の洞窟なんだけど……。
「どうしたのミロウク?」
「なんか見覚えが有るような」
「また地下神殿なんて嫌よ」
「そうじゃ無いさ……無いけれど……あっ、思い出した。勇者の地図だ、この道の作りは」
「「勇者の地図?」」
「ほら、あの依頼の時に報酬として貰ったやつ」
そう、あの地図の道順と同じなのだ。
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