第32話 魔王、散る

「余を招待するには、少し色気が無いな。何処だここは?」


「ここは狭間の世界で御座います」


「ほう、狭間の世界か?貴様、人族だな、命乞いでもしに来たか」


「ご冗談を。その辺の人族と一緒にしないで頂きたい。私はミケレスの末裔ですよ。人より劣る魔族の魔王様に、その様な事を言われたくは有りませんな」


「ふん、ミケレスだと、くだらん」


「魔王様はだいぶ人を憎んでおられますな、伝わって来ますぞ。流石に魔王様の心は覗けませんが、伝わる憎しみから理由は読み取れます…………これは驚いた。アレン公爵のお子でありましたか」


「貴様、何故それを知っている」


「大昔、魔王様のご両親を殺したのは私だからですよ」


「何だと!貴様だったのか。何故、何故、殺した」


「デモニアス様が復活するのに必要な魔道具を譲って下さらないからですよ」


「くっ、許さん!」


「まぁまぁ、折角ここに招待したのです。ここから帰って来たら、お相手をして差し上げましょう。そうそう、ここの魔物達は魔王様と同等、もしくは、それ以上で御座います。では……」


「待て!ダークヌークレア!」


くぅ、間に合わなかったか。



「……何者だ!」


「ザリエカ」

「モディクオ、我ら2人がお相手致します」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




最後のツィガナーの一団が、グラディ大国に到着した。待望の"イアイ"を知ってる人も入っている。


しかし、そう言う気持ちには、なれなかった。気が重くなる情報がたくさん有ったからだ。



「そうですか、サマリスも落とされましたか」

「はい、勇者召喚は成らなかったそうです」


「ダレンシアもレビンスも全面降伏です」


「ラズリィの村が心配」

「みんな元気だと良いが」


「ベストレス帝国と魔王軍の戦いが、迫っている筈です」


「エルフの国が援護する事に決めたと言っていました」


エルフの国の人達なら、何とかしてくれるかも知れない。




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「そろそろ魔王軍の姿が、見えて来てもよさそうなものだが、偵察はまだ戻って来んのか?」


「はっ、もうすぐ戻って来ると思われます」


「騎士団長殿、どう言う事でしょう?」

「判りませんね。何かの作戦かも知れません」



「ただいま戻りました。魔王軍の姿は3km先まで何処にも見当たりません」


「どうなっている?」




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世界は重い空気に包まれていた。魔王軍が静かなのが不気味だからだ。リアさんが占いをするために独りで部屋にこもった。




「姉御はこうなると2、3日は出て来ませんよ」

「そうなんですね」


待つしかない。





       ☆☆☆☆☆



「ふん、狭間の世界とやらの魔物か?」


「失礼ですな魔王殿。我らデモニアス様に仕える4神と呼ばれる内の2柱ですよ」


「ほ~う、自分で柱と言うか、愚かな」


「舐めた口をききおって、ここで朽ち果てるがよい」


「それは貴様らだ。エレメントコンバージョン!」

「ふん、インバージョン」


「ぬぅ、なぜ返しの魔法を……」


「狭間の世界で、そんな工夫もない直接的な魔法攻撃が魔王様ならいざ知らず、我々に通用する訳がなかろう」


「何だと」


「そうさ、舐めているのは魔王様だぜ」


「では、こっちの番だ。エレメントコンバージョン!」


「なっ……」




「ほら、言った通りだろ」

「たわいもない」

「この結晶はどうする?」


「放っておけ。行くぞ」






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「レイオスか?」

「姉御、何か判りましたか」


「ああ。今までなかった2つの大きな力が有る。多分、ザリエカとモディクオだろう」


「不味いですね」


「後、大きな力が1つ消えた」

「何者です」

「そこまでは判らん。何か変わった事は?」


「特には……」




「リアさん、終わったんですね」


「ミロウク様。……デモニアスの僕であるザリエカとモディクオが復活したようです」


「ガーマが他の神殿を見つけたと言う事ですね」

「はい」



「いずれ、この地にも来るんでしょうね?」

「恐らくは」


「ビトゥーさんに話しておく必要があるな」




ーー



「う~む、難しいな。大袈裟に守れば、ここに在ると教える様なものだからな」


「確かにそうですね。俺の国の方は、海から来ないのであれば、国を抜かれなければ良いだけですけど、ガーマの事です、入られてしまうでしょうし」


「防ぎようが無いのは厄介だな」

「うん、見回りを強化するしかないのが歯痒いな」


「見つかる前に、ラバブウとハアルビスを消滅させる事は出来ないのですか?」


「その考えはいいのだが、確実な方法が判らんのだ。失敗すれば復活の手伝いをすることになりかねん」


「確実に出来る確証があれば良いのですね?」

「そんな方法が有ればな」


「解りました。詳しくは話せませんが、心当たりが有るので、確認してまた来ます」


「なに、本当か?……うむ、解った頼む」




ーーーー



「ラバブウとハアルビスを倒す方法ですか?」

「はい」


「以前にお話した通り、奴らは狭間の世界の魔物です。ただ、経験を積み独特の感覚を持っていますので、倒すのは骨が折れると思います」


「そうですか。弱点とかは無いのですか?」


「そうですね……狭間の世界には冬と言うものが有りませんので寒さには弱いです。後は、魔法が得意なので、魔法は返される恐れが有ります。相手の魔法を躱しつつ剣で倒すのがいいかもしれません。……1つ提案が有るのですが」


「何です?」


「リスバティ様には表裏一体の剣ケンとメアリが有ります。ミロウク様も色々な剣をお持ちですが、エルフのダンジョンで、精霊の剣を手にいれると言う手もありますが」


「精霊の剣……」


それで、ラバブウとハアルビスを倒せるのなら、是非手に入れたいが、詳しく話を聞く事にしよう。

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