第31話 脅威の魔軍

 完成した結界魔道具を、ビトゥーさんに届けに行く為、国を出た。


「難しい顔をしているわね」


「そうなるでしょ、いきなりだもの。俺がそんな大きな器だと思う?」


「リアさん達や村の人達、子供達を見ていれば、私はリアさんと同じ気持ちになる。ミロウクなら大丈夫よ」


「買いかぶりだと思うんだけど」


「良いじゃない。国を創ったんだから、やることは一緒よ。人が増えただけよ」


「お気楽だな」


やることは同じか?確かにそうだ。頼りになる人達が増えたわけだから、問題は無いのかな。それより今は、ガーマの事を考えないと。


ガデオンのギルドに着くと、ギルドマスターの部屋にギルバルド伯爵も来ていた。皆、暗い顔をしている。


「何か有ったのですか?」

「ズオーバ王国が魔王軍によって滅んだそうだ」


「ズオーバが……」

「ミロウク?」

「何でもないよ」


父が居る国だ。大丈夫か?まぁ、俺にはもう関係無いが。


「サマリスが勇者の子孫を向かわせたが、魔王に殺されたと報告が有ったらしい。それで慌てて勇者召喚の準備をしているとの事だ」


「ジェイクス達が殺されたのか……」

「魔王は復活していたのね」


「神殿、ガーマと魔王、大変な事が重なってしまったな」


「全くだ」


「幸い、この地方までは距離が有る。対応する準備をすることが出来る。ミロウク君、も協力してくれ」


「勿論です」




         ☆☆☆☆☆




「陛下、勇者召喚の準備が整いました」

「そうか、よくやった。早速、とり行え」


「はっ、直ちに」



『そうは行かんぞ、愚かな者共』


「誰だ!」


「余は魔王である。帰すあてなど無い癖に、異世界から勇者を呼び出し、己の勝手な頼み事をするなど、思い上がるのもいい加減にするがよい。ふふ、それもここまでだ。皆の者、この国を滅せよ!」


「貴様…………」




ーーーーーーーーーーーーーー



国に帰って来た夜、リアさんから勇者の話しを聞かせてもらった。


「じゃあ勇者は、人族を裏切ったわけではないのですね」


「当たり前です。勇者がそんな事をする訳がない。当時、魔族の中にも人と仲良くしようとする穏健派の者がいたのです。その者達が魔王と対立して、身の安全が危うくなったので、勇者が手を貸したのを人族が誤解したのです」


「穏健派の人達はどうなったのです?」


「勇者のお陰で無事に脱出して、今も平和に暮らしています。魔族の隠れ里が在るのです」


「隠れ里ですか?」

「そうです」


「私の両親が殺されたのは、人族と交流して仲良くしていたから、復活した魔王に宰相のコンダゴンが命令を受けたせいね」


「そう言う事ですね」

「…………」


「それとミロウク様に、お詫びしなければならない事が」


「何ですか?」


「以前、白魔法の事を聞かれた時、知らないと言いましたが、知っております」


「ですよね、後からおかしいと少し思いました。気にしてませんよ、理由が有ったんでしょ」


「ありがとう御座います」


「リアさんは、魔王とガーマどちらが厄介だと思います?」


「ガーマのデモニアス神の方が、手強いと思います」


「そうなんだね」

「ただ、そう心配はしていないのです」


「何故?」


「ミロウク様とリスバティ様が持っている剣と……」


「剣と?」


「いえ、イビルブレイカーと表裏一体の剣ケンとメアリは私達の祖先の物です」


「昔、神と戦った時に活躍したんだ」

「そうです」

「安心した」



……ただ不思議なのは、表裏一体の剣ケンとメアリは、昔デモニアスが力を恐れて封印したのを勇者が発見したとして、イビルブレイカーをミロウク様が持っているのが解らない。不思議だ。



        ☆☆☆☆☆



「魔王様。ダレンシア、レビンズ王国と降し、侵攻は順調に進んでおります」


「うむ、思ったより早く、全ての人族どもを奴隷化できるな」



「失礼致します」

「何だ」


「エルフの国から特使が来ております」


「エルフの特使だと……魔王様、如何致しましょう?」


「わざわざここまで来たのだ。無下に帰す事もなかろう。何の話しかだけでも聞いてみるか」




「この度は先ぶれも無く、礼を欠き申し訳ございません。魔王様におかれましては謁見の機会を下さり、広いお心に実に感謝致します」


「よいよい、さぞ重要な話しなのであろう、申してみよ」


「国王リンクデールは、この度の戦いによりこの世界が崩壊するのではと、危惧しております」


「この世界が崩壊するだと?」


「はい、シェリル神により啓示が有ったそうで御座います」


「それで余にどうしろと?」


「人族との戦いを、お止め頂きたいと申しております」


「……それは出来んな。エルフに怨みは無いが、人族は許す事ができん。どうしても止めたければ、力ずくで止めてみよ」


「……残念で御座います」




「エルフも降すのですか?」

「楯突くので有れば、仕方があるまい」



世界が崩壊する前に、人族全て我が僕にしてくれるわ。



ーーーー



「魔王様、目の前のベストレス帝国を攻め落とせば、この世界の1/3は手に入れた事になります」


「ふふ、期待しているぞ、ゴンダゴン」


「ただひとつ厄介な事が、エルフ達がベストレスに肩入れするそうで御座います」


「そうか。やむを得まい、エルフの国も攻め落とすとする」



『勝手な事をされては困りますな』

「何者だ!」



「お初にお目にかかります。ガーマと申します」


「どうやってここに入った?」


「このような生温い警備を突破する事など、造作もないこと、騒ぐ事でも有りますまい。そんな事より、エルフの地はデモニアス神が復活する場所。なにを勝手に攻め落とすなどと、ふざけた事を」


「理由の解らない事を、皆の者なにをしておる!曲者じゃ」


「ここは雑魚が煩いですな、魔王様一緒に来ていただきましょう。転移!」



「ああ、魔王様」

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