第29話 魔軍侵攻


         ☆☆☆☆☆


「魔王様、転移の魔道具と魔法陣の設置が、ほぼ完了致しました」


「よし、余の魔力もだいぶ戻った様だ。先ずは、勇者を召喚した魔法国家サマリスと言う、ふざけた国から侵略せよ」


「ははっ」



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「陛下、大変で御座います。魔族の大軍が東の村から攻め行って、今、ゼイロンの街が陥落寸前との伝令が領主の従魔より届きました」


「なんだと!まさか魔王が、復活したのでは有るまいな?」


「それはまだ、確認のしようが有りません」


「くぅ、では至急、勇者の子孫達を向かわせろ。こう言う時の為に、爵位を与えたのだ。近隣の領主達にも軍の派遣を要請せよ」


「はっ、直ちに」



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「はっ、魔王軍などと言うから、どれだの物かと思ったら、大した事とないじゃないか」


「そうよ、私達の実力に勇者の装備が有れば、なんの問題も無いわ」


「そうだぜジェイクス、従魔を使ってゼイロンの街を奪還した事を知らせて、とっとと帰ろうぜ」


「ああ、頼む」




         ☆☆☆☆☆



「どうだ?サナリスは落としたか」

「それが、途中までは良かったのですが……」


「申してみよ」


「勇者パーティーの子孫とやらが現れまして、思うように行かないのです」


「勇者パーティーの子孫だと?……ふふ、面白い。あの勇者を裏切った奴らの子孫か。どんな奴らか見に行ってやろう」


「魔王様が出られるのですか?」

「ホンの肩慣らしだ。転移の魔法陣まで案内せい」


「はっ!」



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ほう、昔に比べて、だいぶ街も大きくなったな。一気に街を壊滅させては、勇者パーティーの子孫に会えなくなるか?どれ手加減して、「ダークヌークレア!」



[ドッゴォーン!!!]



「なんだ!」

「火の手が上がっています。敵襲かと思われます」


「ふっ、懲りない奴らだ。魔族ってバカの集まりか?」


「仕方ないわね、行きましょう」





「遅いではないか。待ちくたびれたぞ」

「はっ、偉そうに、何だお前は?」


「余は魔王である。貴様らか勇者パーティーの子孫は?」


「魔王だと……」


「ジェイクス、気にする事はない。こんな奴、俺とズベーリァだけで十分だ。行くぞ、ズベーリァ」


「あいよ」


「喰らえ!スピニングランス」

「ふん、小賢しい。塵と消えろ」


「なっ、ぐふゎ~」「そんな、嫌よ……」



「ゴンザレス!ズベーリァ!」


「こんな者が勇者のパーティーの子孫だと?こんな連中に裏切られたかと思うと、敵ではあったが、あの勇者が不憫でならん」


「……くぅ、貴様」


「興味を失った、貴様の両腕だけ貰って行く。人どもは、この世から抹殺してやると、帰って覚悟せよと伝えるがよい」



「ぐわっ」




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「何だと!それでジェイクスは、どうしておるのだ」


「家にとじ込もって、ガタガタ震えているそうで御座います」


「なんと情けない。子孫の者達と関係者は、全て奪爵せよ」


「はっ!」


「……こうなれば仕方ない。直ちに勇者召喚の準備に取りかかれ」


「……畏まりました」



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俺達はギルバルド伯爵の屋敷に来ている。独立した後の結果報告に来たのだ。


「そうか、無事にすんだか。あっさり決まったな、さすがと言うべきかな?」


「ありがとう御座います」

「それで、これからどうするのだ?」


「沼地を埋め立て、領土を広げようと思います。人も増える予定なので」


「あの沼地をか?出来るのかそんなこと」

「ええ、そう言う事に、特化した人達が来るもので」


「う~む、1度君の国を見てみたいのだが」

「はい、喜んで。どうぞ来てください」




この頃になると、リアさんの仲間が各地方から集まり始めた。


さすが、さすらいの民、色んな方面の熟練者がいる。


沼地は、地中まで土魔法で板壁を造り、少しずつ区切って乾燥させ、再び土魔法で固めて行く。畑の方は適度な柔らかさで抑えると言う、地道な作業だ。


街として、何処に何を造るなど計画するのが得意なダノンさんを紹介して貰い、鍛冶場や錬金場、学校など造ってもらう事にした。



この国にも、冒険者ギルドを造るにはどうすればいいのだろう?今度、ギルドマスターのグルマさんに聞いてみよう。


残念なのは、まだ"イアイ"を知っている人が来ない事だ。





街造りは順調に進んで行ったが、冬が来たため沼地埋め立てと開拓は一時中断になった。作業再開は年が明け、3の月からになる。


この地方は北と南の中間に位置するので、雪が積もったとしても30Cm程度で沼地に氷が張る程度ですんでいる。


冬の間に、出きる事を考えなくてはならない。リアさん達にも考えてもらった


俺達が考えたのは、フロッガルの肉で作った、冒険者用の保存がきく携帯食に、カジュ酒をつけたセットだ。単調な味にならない様に、燻製する時に使う木の種類を7種にして売る事にする。


リアさん達ツィガナーは、フロッガルの革で作った防水作用が有る冒険者用のブーツで、靴底にはフロッガルの舌を特別加工し、柔らかく耐久性に有る物にして、滑らずどんな地形にもフィットする物を作ってくれた。


この2品は売れると思うので、フロッガルの動きが鈍いこの時期に大量に捕まえる為、隠れていそうな南の沼地を探索する事になった。今回はリアさんも一緒だ。



「フロッガルの発生元見たいな物が有る筈、そこは大切にしないとな」


「そうですね。取りすぎて、いなくなられては困ります」


俺達は西へ西へと進んだ。西の果てまで来たのでは、と思った位歩いた時、高さ10m程度の不自然な岩山を見つけた。


「周りを調べてみよう」

「そうですね」



「洞穴が有るわ」

「入って調べるしかないでしょうね?」


「そうだな」


皆で中に入る。洞窟内は緩やかに下っている。今の所、魔物の気配は無いが俺にはこの洞窟は既視感が有る気がしてならない。


やがて開けた場所に出た。


「リアさん、不味いかも」


目の前には見たことのある神殿が在ったのだ。


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