第28話 独立宣言
ギルドマスターのグルマさんと客間のソファーに座っているのだが、流石に落ち着かない。
ギルバルド伯爵が入って来た。調べによると歳は30だ。父のザルスは50歳だが早々にギルバルドに家督を譲った。だからと言ってザルスが無能な訳ではなく、それだけ優秀なのだ。
「話しは聞いるよ。地下神殿の件では、お世話になっている様だね」
「こちらの方こそ、グルマさんに良くして頂いています」
「ふふ、そうかい?では本題に入ろう。独立するのは構わないが、護りきれるのかい?国が許す訳がない。潰す為に本気を出して来るのは、君も解っているだろ」
「はい、仲間もいるので大丈夫と考えています」
「ふむ、自信有りか。……判った、私の方は何も言う事は無い、好きにしなさい」
「ありがとう御座います」
「落ち着いたら、また会おう」
「はい、分かりました。宜しくお願いします」
「ミロウク、俺は伯爵と話していくので、ここでな」
「はい、ありがとう御座いました」
「グルマ、私には彼のスキルが読めなかった」
「私もですよ。しかし、あいつの運の良さは折り紙つきで、それに一緒に行動している冒険者達は、ミロウクをベタ褒めです」
「なるほど。私らには解らない、何かが有ると言うことか。面白くなりそうだな」
ーー
「リスバティ、お待たせ」
「どうだった?」
「うん、噂の通りの人だったよ」
「良かったわね」
「ジーラスカの人達とは仲良くしたいからね」
「後はどうするの?」
「役人がカジュ酒を取りに来るまで、村の防備の徹底だな」
「そうね、頑張らないと」
ーー
二週間後、カジュ酒を取りに役人がやって来た。
「ん、カジュ酒が用意されて無いではないか」
「お役人様、カジュ酒はご用意出来ません」
「何だと……まぁ、急に申したのだ、仕方ない。ならばいつ用意出来る?」
「いえ、もう納める気は無いのです」
「貴様、国に逆らう気か、ただではすまんぞ」
「覚悟の上で御座います」
「よかろう。この場で全員、捕らえて奴隷にしてくれる。逆らえば斬る」
「そうは行かない。止めて貰おうか」
「何だ貴様、部外者は引っ込んでおれ。皆、村の者を引っ捕らえよ」
「はっ!」
「止めろと言っている。リスバティ、頼む」
「了解」
リスバティは
暗雲が空に立ち込め、雷が役人と兵士達に降り注いだ。
「うぐっ」「ぐはっ」
「弱くしてあるから死なないわ」
「次に来たら手加減しませんよ。領主様にお伝え下さい」
「くっ、覚えておれ、この借りは必ず返す」
「遠慮しておくよ」
ーー
「男爵にも面子が有るからね、大軍で来るだろうねぇ」
「リアさんの言う通りだろうな」
「でも準備はバッチリでしょ」
「まあね」
一週間が経が経ち、その時が来た。
「お兄ちゃん、来たよ」
見張り用の櫓から、息を切らして猫族のリコちゃんが来た。
「来たか。レイオスさん、頼みます」
「よっしゃ。お前達、やるぜ」
「任せな」
村の周りを囲む様に、小さな魔法陣が数多く描かれている。これは村の裏に広がる沼地に造られた、大防壁を転移させる為の魔法陣だ。
ツィガナーの人達が、魔法陣を作動させる術式を唱え始める。
魔法陣は光だし、各々に対応する大防壁を呼び出す。村の周りは、あっと言う間に大防壁に囲まれ、大要塞に変貌する。
大防壁には階段が付いており、登って上を歩く事が出来る。
「5000人って所か。グロライハ男爵の奴、意外と頑張ったな」
「魔法士みたいのがいますね。この間、雷にやられたから、少しは考えた様だ」
「た、隊長殿、あれを」
「うっ、なんと凄い防壁だ。ゲゲス、どうなっておる。この様な報告は受けておらんぞ」
「も、申し訳有りません。私が来た時には、この様な防壁など微塵も有りませんでした」
「う~む、すると短期間でこれを造った、と言う事か……」
「あれ?奴ら引き上げて行きますよ」
「ほ~う。少しは先が読める奴がいる様だ」
「どうするんですかね?」
「近隣の領主に協力を求めて、防壁を崩す物を持って来るだろうね」
「ミロウクの言う通りだな。恐らく今度は、兵の数は5000ではすまないだろうね」
「では、防壁前に術式作動の落とし穴の魔法陣を作って置きましょう」
「それがいい」
ーー
「意外に早かったわね」
「そうですね」
奴らが再び来たのは一週間後だった。攻城兵器の投石機や破壊槌を持って来た。魔法使いもたくさんいる。
「兵士の数は、この前の3倍かな?」
「直ぐ終わらせよう。奴らが防壁に取り付いたら、落とし穴作動して下さいね」
「了解です」
「魔法使いが厄介そうだから、リスバティ頼む」
「いいわ」
「ミロウクは何をするの?」
「俺も落とし穴、専門さ」
兵士達が、攻城兵器を何台も引っ張って、城壁の前に来る。綺麗に並んだ所で、落とし穴を作動させると折角運んだ兵器と兵士達が大きな穴に呑み込まれて行った。
その様子を見て、魔法使い達が一斉にファイアーボールを防壁に放つ。
リスバティが
風が吹き荒れ、リスバティはファイアーボールの火球を操る様に魔法使いへ、そっくりそのまま返した。
慌てたのは魔法使いだ、魔法障壁を張る暇も無く自分のファイアーボールを喰らう。
「リスバティさんは、その剣を使いこなしてるね」
「ええ、仲が良いのです」
「そうなのね」
俺は土の生活魔法で、兵士達を片っ端から穴に落としていく。ドンハドコさんに作ってもらった、魔力を貯める服を着ているので、どんなに魔法を使っても、もう倒れる事は無い。
男爵の兵士達は、城壁に触れる事さえ出来ずに、沈んでいった。
「姉御、何人来ようが、ここは落とせないね」
「ああ。ミロウク、リスバティ、それに私達が居ればここは難攻不落だ」
「後は、王都でどう判断するかだな」
「この村に、かまってなんかいられないと思うがな。私は」
「それは?」
「今に解るよ、ミロウク」
それから3週間後、俺とリスバティは、グロライハ男爵の屋敷を訪問した。
「グロライハ男爵にお会いしたいのだが」
「貴様、何者だ?」
「グラディ村のミロウクと申します」
「そんな奴に男爵様が会うわけ無いだろう。帰れ」
「ま、待て。……グラディ村と言ったか。おい、グロライハ様に伝えよ」
「は、はい」
「お会いになるそうだ、こっちへ来い」
なかなか洒落た部屋だ、家具も絵も良いものが揃えて有る。だいぶ私腹を肥やしたな、おおかた王都には、たいして収益は無いと報告しているのだろう。
「貴様か、村人達を焚き付けたのは?」
部屋に入って来るなり、唾を飛ばしながら俺に噛みついて来た。汚い、相手にしたくないので、用件だけ言う
「それで国王はなんと?」
「くぅ、小癪な叩き斬る……」
護衛の騎士達が動く前に、リスバティの剣が男爵の首に当てられる。
「わ、判った、話そう。陛下は捨て置けと言った」
「では、これで終わりですね」
「し、仕方がない。気分が悪い、早く出ていけ」
「ありがとう御座います」
俺は貴族の礼に則り、丁寧にお辞儀をして部屋を出た。
村に帰って一週間後、商人達から魔王が復活した事を聞いた。
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