第27話 決断

「偽預言者の噂は聞いていたが、まさかそんな危険な奴だとは」


「でも、この様子だとガーマの奴は、ここの神殿の事は知らないと思います」


「神殿の事は内密にした方が良いな。封印をして、調査は慎重にせねばならん。準備には時間がかかりそうだ」


「しかし、何故エルフの国が狙われたのだ?」


「それは判りません。ガーマは言わなかったのです」


「うむ、何か有ったら連絡するので、宜しく頼む」


「分かりました」




こんな所でガーマと繋がるなんて。


「暫くは村にいた方がいいな」

「そうね」




「難しい顔をして、どうした?」


「神殿にはガーマと言う嫌な奴が、関わっていそうなんだ」


「ガーマ?」

「偽預言者さ」


「ああ、あの話しか」

「リアさんは何か知っているの」


「私達の間で伝わっている御伽噺があってな、遥か昔、今のエルフの国がある地に邪神が封印されている。と言う様な噺だ」


「それってデモニアス神の事?」

「さて、それは判らないな」


「俺の頭の中は、もうそれで決まりだ。と言っている。絶対そうだ」


「おいおい、決めつけは良くないぞ。御伽噺だ」



事はハッキリしないまま、時は過ぎて秋の収穫も終わり、この村にまた税を納める時が近づいて来た。



「ミロウク、すんなりと納税がすむと思うか?」


「前から聞こうと思っていたが、リアさん達は何者ですか?」


「質問を質問で返すのか?」

「いや、そう言う訳ではなくてですね」


「圧されてるわよ、しっかり」

「リスバティ、応援してくれてもいいだろう」


「ふふ、私達は各地を旅して回る商人の様な物だ」


各地を旅してって、ツィガナーみたいだな……まさかね


「ツィガナー見たいですね」

「ああ、そう呼ぶ者もいるな」


「え━━━━━っ」

「何をそんなに驚いているのだ」


「会いたかったんですよ、ツィガナーに」

「ほう、何で?」


「ツィガナーの剣"イアイ"の事を聞きたくて」


「……イアイを知っている者は、今この中にはいない。それに、元々イアイは勇者から教わったものだ」


「そうなんですか……勇者からですか」

「ずいぶんとガッガリしたな」


「ミロウクは、イアイの事が知りたくてしょうがないんです」


「そうなのか?もうすぐ知っている者が来ると思うぞ」


「本当ですか?やった!」

「さて、質問には答えたぞ」


「こっちの番ですか。そうですね、この国の食糧事情は厳しくなっているでしょうから、税は上げて来るでしょうね」


「それで、どうする?」

「俺は、この村の村長ではないのですが」


「深く関わってしまったのでは?」


「前にも言いましたが、この村の人達次第ですが、あまりに酷い様なら……」


「酷い様なら?」

「懲らしめるかも」


「ぷっ、懲らしめる?」

「笑わないで下さいよ」


「しかしな、そんな事で修まるかな」

「そうですね。困ったな」


「まぁ、今、こんな話しをしても仕方ないがな」

「そうですね、その時になって見ないと」




数日後、役人からの通達が有った様で、村の人達が一生懸命に農作物を整理している。


その日の午後、役人達がやって来た。綺麗に並べられている納税品を前に、いつもの役人は満足そうだ。


「うむ、結構。しかしだ、今回より税率が変わった。四割五分とする。そしてカジュの実をこの村の特産品とし、500本の納品を命ずる」


「そ、そんな、急に言われましても」


「もう決まった事だ、足りない分を早く持って参れ。カジュ酒の方は納期を待ってやる」




「思った通りだな」

「その様ですね」



ガックリしている村長の所へ行く。


「これは、皆さんが作ったカジュ酒を売った代金です。これで冬を越す食糧を買って下さい」


「ミロウク様、……」


「俺は余計な事をしたのかもしれません」


「いいえ、その様な事は、決して有りません。ミロウク様が居なければ、とうの昔に皆、飢え死にしております。ミロウク様には感謝しております」


「そうよ、お兄ちゃん」


「ミロウク様、私どもは産まれてから農業しか有りませんでした。学も無く、他の事は何も知らないのです。ミロウク様ならお解りになる筈、どうすべきなのでしょう?」


そう言われてもな……。


気がつけば、いつの間にか村の人達が集まっていた。皆、真剣な目をしている。



「このままなら、貴族達に死ぬまで食い物にされるだけですね」


「そんな生活、俺は嫌だ」

「俺も」

「私らも」



「ミロウクがその気なら、私達も協力する」

「リアさん……」


俺は、皆を護る事が出来るだろうか?


「私もいるし、ケンとメアリも居るのよ」


「分かった。村長さん、覚悟は有りますか?」

「勿論で御座います。皆も良いな!」


「「「ああ、大丈夫だとも」」」



「ふふ、ミロウク、何からやる?」

「確か、土魔法が得意な人が居ましたよね?」


「よく判ったな。いるぞ」

「後、錬金術の得意な人もお願いします」


「何を始める気か知らんが、面白そうだな」



ーー


村はリアさんに任せて、俺達はガデオンの街に来た。ギルドマスターにお願い事が有るからだ。顔見知りの受付嬢の所に行く。


受付嬢はニコッとしてくれて、すぐに魔道具で連絡してくれた。


「どうした?何か不味い事でも有ったか」


「いえ、ちょっと別口でお願いが」

「ふむ、ミロウクの頼みなら聞くが」


「ここの領主様を紹介して欲しいのです」

「領主様を。また、何で?」


「それが、ちょっと恥ずかしいのですが……」


「はあ、グラディ村を独立させるだと!本気か」

「もちろんです」


「しかしな、領主様を変な争い事に巻き込まれては困る」


「そこは安心して下さい。独立する事を知って頂き、私の顔を見て下さるだけで良いのです」


「なるほど。……解った、話をしてみよう」

「ありがとう御座います」



一週間後、ギルドマスターのグルマさんから連絡が有った。3日後にギルバルド伯爵が会って下さるそうだ。俺達は、直ぐガデオンへ向かった。



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