第21話 勇者の隠れ家を見つけた

 今日はドンハドゴさんが、山籠りを終え戻って来る日だ。


店に帰って来たドンハドゴさんは、精悍で逞しかった。


「お父さん」「父ちゃん」


「戻ったぞお前達。ミディは元気になったのだな」

「ええ、ミロウクさんのお陰よ」


「すまねぇな、ミロウクさん」

「約束ですから。後、呼び捨てで良いですよ」


「そうかい。で、早速だが何を作って欲しいんだ」


「実は…………」


「なるほど。面白い事を考えるな。さて、どう構築して行けばいいか……」


「考えている所すいませんが、必要そうな物を取り合えず出して置きます」



マジックBOXとアイテムBOXから、ミノタウロスの魔石とブリュープラチナを出す。



「ミロウク達が倒したのか?悪いが2人共強そうに見えんのだが」


「よく言われます」


「うむ。しかし、これは助かるな。考えさせてくれ」




その日の夕食は、ミノタウロスの肉をミディさんに渡して料理してもらった。


「兄ちゃん、美味い。美味すぎる」


確かにミノタウロス肉のステーキは別格だ。貴族でも滅多に口に出来ない。俺も子供の頃、新年の儀で一口食べただけだ。



「ミロウク、お前は飲んでくれ」

「しかし……」


「気にするな、俺はもう大丈夫だ。酒は飲まん」

「お父さん」


「分かりました、遠慮なく。……ぷっふぁ~」

「どうだ?」


「最高ですね、この神泉と言う酒は」



ーー


今日は気持ち良く寝れそうだ。


「ミロウク、ちょっと良い」

「どうぞ」


「さっき、宿のおばさん達が話してたの。西の谷で冒険者達が頻繁に魔族を見てるそうよ」


「……勇者の隠れ家が在るのかな?」

「ギルドもだいぶ警戒してるって」


「問題が起きている訳でも無いしな。さすがにこっちから仕掛けられ無いな。リスバティの仇だったら話しは別だが」


「父と母を襲わせた奴は、宰相のゴンダゴンて言っていたわ」


「ごめん、思い出させてしまったね」

「ううん、忘れてはいけない事なの」


「でも相手が宰相なんて偉い奴なら、現実的に考えれば、俺達2人では少しきついかも」


「そうね」


「なんか方法を考えるさ、先ずは強くならなきゃ。だろ?」


「うん、気が楽になった。おやすみ」

「おやすみ」


魔族のお偉いさんか、どうした物か。これは忘れない様にしよう。




魔道具が出来るまでは、ギルドで依頼をこなしランク上げの為に点数を稼ぐ事にする。


依頼板には西の谷の調査が有った。どうする、俺は魔族の情報が欲しい。魔族が話す可能性は無いに等しいが、関わっていれば皆無では無い。



「調査依頼を受けようと思う」

「考えが有るのでしょう」


「少しでも情報が欲しい」

「ありがとう」



単独での調査は危険と言う事で、複数のパーティー混合で調査は行う。



「魔族の連中はここで何をしているんだ」


「他の国でも魔族が頻繁に現れているし、勇者の遺産を奪っている魔族もいる」


「と言う事はだ、この国では勇者の隠れ家は発見されていない。奴らは探してるのか?」


「じゃ、この辺を調査してたら俺達が見つけるかも」


「相変わらずトミーはお気楽だね。そんな簡単に隠れ家が見つかるはず無いだろ」



「お~い、こっちに洞窟が在るぞ」


「おっ」 「まさか」  「マジぃ」


みんなで中に入って見る。



扉の中の部屋には、ただベッドが有るだけだった。


「残念」

「ま、待て。あれを見ろ」


「「魔法陣!」」


「しかし、これは自動発動型じゃない。術式が判らないと作動しない」


「私が調べて見ましょう」



双剣のバラのカレイラさんが名乗りを上げた。彼女は錬金術の中でも魔法陣作成が得意の様だ。


暫く床の魔法陣を眺めて、軽くうなずいた。


「そんなに複雑じゃない見たいよ、この大きさだと中に入れるのは後1人ね、誰が行く?」


「俺が行こう。アイテムBOXが有る。もしお宝が有るなら持ってこれる」


今度は俺が手を上げた。


「よし、兄ちゃんに任せた。良いなみんな」


「あいよ」 「ああ」  「いいわ」


カレイラさんは俺が魔法陣に乗ると呪文を唱えた。


「ロケイト!」



「凄いわ」

「確かに」


最初に目に入ったのは金銀宝石類だ。豪華を通り越している。そして数多くの剣と盾が有った。


アイテムBOXに全て入れて戻る。


「おっ、戻ってきたな」


「首尾は?」


俺は勇者の遺産を並べた。


「おおー」「やったー」 「きゃー」


「と、とにかく、一旦ギルドに戻ろう」

「賛成」



「ミロウク……」

「ああ、分かってる」



洞窟を出ると、俺達を迎えてくれたのは魔族だった。



「ご苦労だった、間抜けな人族ども。勇者の遺産は置いてってもらおう」


「魔族!」


「何で判ったんだ」

「これですよ」


使い魔のカエルの足を持って見せる。


「お前達の魔法陣は俺達には解けなくてな。さあ話しは終わりだ」


「はい、そうですか。とはいかん、みんな行くぞ」


「がってん」 「あいよ」 「任せて」


「ふん、くそ虫ども目、死ね!」


いきなり魔族は、火属性広域魔法を放った。魔族独特の物か見た事が無い魔法だ。


巨大な炎が回転し円盤状になって向かって来る。俺達を一編に薙ぎ払う気だ。


「あ、ヤバイぞ。何とか避けろ」

「簡単に言うな」


リスバティが表裏一体の剣を振る。風が吹き荒れ、炎の巨大円盤をそのままの形で魔族の方へそっくり返す。


何が起こったのか理解が出来ない魔族達は、回転する炎の円盤に当たり上半身が無くなって行く。俺達の倍近く居た魔族は半分以上が死んだ。


「い、今だ」

「おう」


俺達以外の3つのパーティーが、思い思いに攻撃をする。生き残った魔族も我に返り応戦する。


中々の泥仕合だ。俺もこん棒で撲り殺していく。



「兄ちゃん、姉ちゃん。ありがとうよ、助かったぜ」


「ホントよ」

「いいえ」



今回の勇者の遺産の発見は、依頼中だったので俺達の物にはならないのだが、魔族から守った功績で最初に各自が1つもらえる事になった。


「兄ちゃん達が一等最初だ」

「そうだ、そうだ」


「分かりました」


剣には俺が持っている以上の物は無い、盾の中に面白いのが有ったので俺は盾を選び、リスバティは、魔法が付与された指輪にした。


こうして依頼は無事に終了した。



もしかして、あの紫のクリスタルも勇者の遺産かと思っていたが、俺が入った洞穴の部屋には転移の魔法陣なんて無かった。他にお宝も無かったし、あれは、やっぱり高級な魔道具だったのだろう。


「どうしたの?ミロウク」

「何でも無いよ」


早くドンハドゴさんの魔道具が出来ると良いな。


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