第17話 予言の行方

 地下20階なのだが、なかなかジュエルゴーレムが出てこない。


ゴーストやポルターガイストばっかり出て来るので、うんざりだ。しかも集団で出て来て、剣が効かないのも腹立たしい。


俺もリスバティも、光属性の広域魔法はまだ使え無いので、一頭ずつ撃っている。


しかし単調だがレベルと光属性の魔法レベルは上がっている。つまり本来の目的は達成しているのでここは我慢、辛抱でジュエルゴーレムが出て来るのを待つ。


俺とリスバティの光属性の魔法レベルが3になった時、そいつは現れた。


「ミロウク」

「やっとかよ。待ってたぜ」


「魔核を破壊するんだったわね」

「右の腰の裏だ」


「私がダークバレットでやるわ。ミロウクは倒れたらマジックBOXね」


「了解」


リスバティはフェイントをかけ、ジュエルゴーレムの後ろに回り込もうとするが、奴の動きは結構早く一回目は失敗した。


「俺が頭をこん棒で撲るから、その隙に」

「はい」



『昇速×4』 おもいっきりジュエルゴーレムの横っ面を撲る。


金剛石で出来た奴の顔は少しへこみ、俺の方へ顔を向けた。打ち合わせ通りリスバティが後ろに回り、"ダークバレット"を腰に撃ち込んだ。


リスバティの撃った"ダークバレット"は奴の腰を貫通して俺の足の横を通って壁をも破壊する。おっと、危ない。


ジュエルゴーレムは崩れ落ちた。すかさず、教わった通りマジックBOXを作動させる。ジュエルゴーレムの身体が一瞬光り、消えた。上手く行った様だ。


「終わったぁ~」

「お疲れ様」



転移の巻物を使って外に出る。外は真っ暗だった。何時だ今?定期便の馬車もいない。どうやら、ここで野営の様だ。街に戻ったら高級な宿で、2、3日ゆっくりしてから王都に帰ろう、当然だよね。





「最後の宿は素敵だったなぁ。お風呂は広いし料理も最高だった」



馬車でのリスバティは上機嫌だ。良かった、良かった。




俺達が戻ると直ぐに、城にてジュエルゴーレムを解体する事になった。


「やっと来をったか」


予言者ガーマが現れた、相変わらず態度がでかい。



「皆、揃った様だな」

「では陛下始めます」


「うむ」



「ミロウク殿、宣誓を頼む。事実と違えば、ただ神の誓約書が燃えるだけだ。君には何の影響も無い、安心してくれ」


「解りました」


言われた通りに宣誓する。神の誓約書に何の変化も無い。



「宜しいかな?ガーマ殿」

「良いでしょう」


「ジュエルゴーレムを解体せよ」

「はっ」



ジュエルゴーレムの解体が始まった。胸の部分が切り開かれ魔石が出て来る。



何色でも構わん。催眠・幻影の魔道具は作動してある。どうせ、ここに居る連中には赤にしか見えん。



「き、黄色です」


解体した者が高々と魔石を持ち上げる。



「「「おお~」」」


一瞬の間の後に、歓声が上がった。



「バ、バかな。そんな筈は……」


「ガーマ殿、この城内では昔から謀反など有っては困る故、精神攻撃は国宝の魔道具によって強力な結界が張って有って効かぬのだ」



「我らのシェリル神も予言は出来るのじゃ、要らぬお世話はよい。我国から退場して頂こう」



「くぬぅ、後悔するぞ」


ガーマは捨て台詞を言って出ていった。俺達の役目も終わった、帰ろう。


「これ、お返し致します」

「ミロウク殿、ちょっと待ってくれぬか。陛下」


「うむ。ミロウク、世話になったな」

「いいえ、お役に立てて良かったです」


「お礼じゃ、そのマジックBOXは持って行くがよい」


「あ、ありがとう御座います」


「そうそう、ミロウク殿。ここでジュエルゴーレムが暴れては不味いので言わなかったが、そのマジックBOXは何でも生きたまま入れられる。そして時間も停止する」



「えっ、そんな貴重な物を、本当に宜しいのですか」


「もちろんじゃ」

「感謝致します、陛下」




ーー


「インチキ預言者に感謝ね」

「そうだね、ちょっと複雑な気持ちだがな」


「これからの予定はどうするの?」


「実は俺、海が見たこと無いんだ。そこにはダンジョンも在るし、ここまで来たら西に行って神聖国グレコトスに行きたい」


「そうなんだ。良いわよ」

「王都には大神殿も在るらしい」


「ホント、観てみたい」

「よし、決まり」



王都を出て次の街のテラに1泊して、エルフの国レイカデールともお別れだ。


街を出て馬車は西の森に入ろうとしているが、異様な気配がする。恐ろしくでかい、森と同じ位の物だ。いや、ちょっと違うか?どちらにしてもこのまま進むのは不味い。


「御者さん、止めて下さい」

「どうしました?」


護衛の冒険者の人達も集まって来た。


「兄さん、何か有ったのかい?」

「あの森様子が変です」



「俺は何も感じないが」

「そう言えば、鳥の鳴き声がしないな」


「俺達、斥候が得意なんで見てきます」


俺は気配遮断の重ねで、リスバティは"見えない物の指輪"を使って気配を消す。


「すげえ、消えたぞあの子達」




慎重に森に入る。やはり森全体が、得体の知れない魔物の様な感じだ。


しかし何だこの違和感。


(ミロウク、あれ)

(えっ)


(あれ、樹の枝の先)

(……虫?……これって)


森全体に虫がいるんだ、半端な数じゃない。


(ガーマだ)

(仕返しする気よ)


(大変だ、早く知らせないと)





「森の中に虫の魔物がたくさんいます」

「虫?」


「皆さん、伯爵のお屋敷が虫に襲われた事や預言者の事はご存知ですか?」


「勿論だとも……あっ、まさか」


「それです。皆さん街に戻って迎撃の体制を整えて下さい。俺達は見張ってます」


「分かった、頼む。でも無理はするなよ。俺達は護衛で、君達はお客さんだ」


「はい」





「どうするの?」

「動き出したら少しでも倒してから、退こう」


「うん」



「おやおや、珍しいお客さんだ」


「「ガーマ!」」


「たいして実力も無いくせに、首を突っ込みおって。死にたいか」


「なぜエルフの国を狙う。お前の実力なら、もっと落とし易い国が有ったろう」


「ほお、なかなか鋭い。その内に解るさ、生きていたらな」


虫達がザワザワして来た。


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