第16話 予言勝負

 俺達の方が予言者より一足早く王都に着いた様だ。王都でも、預言者の事は噂になっていた。


「どうやって実力を確かめるつもりかしら?」

「さてね。変な事にならなければ良いが」



翌日、馬車に乗る為、城の方へ行くと大勢の人が城の方を見上げている。


「何が有るんですか?」


「今から国王と預言者が話をするそうです。みんなそれを観ようとしてるんです」


「どうやって?」

「まあ、城を観ててご覧なさい」



城の上空に城内が大きく映し出された。謁見の間の様だ。王座に座っている国王とひざまずきもせず立っている預言者が見える。


どういう原理だ?……話が始まった。



「そなたがデモニアス神の預言者か、名は何と申す」


「ガーマと申します、陛下」


「ではガーマ、くだらん駆け引きは無しじゃ。我らが信仰するシェリル神とそなたのデモニアス神と予言勝負をするとしよう」


「予言勝負……。方法は?」


「精霊のダンジョンにはジュエルゴーレムと言う魔物がおってな、それを捕えて来る。ジュエルゴーレムの魔石は個々に色が違う、それが何色か予言するのじゃ。そなたの相手はこの、ストラダがする」


「そのジュエルゴーレムはどうするのです?」


「そなたが捕えて来ても良いし、誰かに頼んでも良いぞ」


「それでは誰かに頼むとします」


「よろしい、では予言せよ。魔石の色は何色じゃ?」


「……赤です」


「ストラダ、何色か?」

「黄色です」


「ジュエルゴーレムがここに着き次第、神の誓約書によって、嘘、偽りや手が加えられて無い事を証明した後、解体し魔石の色を確かめる」


「私が勝てばデモニアス様の神殿を建てて下さるのですね?」


「そうしよう。だが、そなたが負けた時は黙って去るが良い」



ーー


ふん、魔石の色など何色でも問題は無い。勇者の隠れ家に有った、このレジェンド級の催眠と幻影の魔道具で全ての者を欺けばよいのだ。さて、どいつにジュエルゴーレムを狩ってこさせるか。


ん、あの男はこの前しゃしゃり出て来た奴だ。魔法属性が1つも無いし、スキルも"重ねる"だ。たいして実力も無い癖にでしゃばりおって。あいつにやらせてやる。




「すまんが君」


エルフの騎士が俺に何の用だ?


「何でしょう?」


「預言者殿が、君にジュエルゴーレムを捕えて来て欲しいと言ってな」


「はあ?」


横を見ると、あの預言者が笑っている。ふざけた野郎だ。


「身の安全は保証するし報酬もはずむ、この国を助けると思って、受けてくれぬか」


「良いじゃないミロウク、どうせダンジョンに行くんだし」


それはそうだが……。


「分かりました」

「受けてくれるか。ありがとう」


「ジュエルゴーレムを捕まえたら城に行きます」


「頼む、城での手配はしておく」

「クックック、頼んだぞ」


いちいち癇に障る奴だ。



ーー



「面白い事になったわね」


「そうだが、あの野郎が負けても大人しく引くとは思えない」


「そうね」




精霊のダンジョンの街、マドレスは王都から1日半の所に在るので、着くのは明日の午後だったが、エルフの騎士が手配してくれた馬車なので、食事以外は休む事無く夜通し走ってくれる。お陰で、朝1番で着く事が出来た。


別に慌てる事はないので、俺達は明日まで休む事にしてゆっくり過ごす。




「仕方ない、行くとするか」

「早く済ませましょう」


「うん、ゆっくりレベル上げしたいもんな」


馬車の定期便でダンジョンまで行く。このダンジョンには精霊がいると言われていて、精霊に気に入られれば契約が出来るそうだ。


「リスバティなら契約出来るかも」

「私にはジュエネが居るからいいわ」


「ピィー!」


ジュエネは嬉しそうだ。



「それにしてもエルフの技術は凄いわね」


「ああ、このマジックBOXと言い、空の大映像と言い凄いな」


通常、ダンジョンの魔物は倒せば消えてしまうが、今回は持って帰らなくてはいけないので、倒した後そのまま魔物を取り込む事が出来る魔道具を貸してくれたのだ。


「ジュエルゴーレムが出るのは何階だったっけ?」

「地下20階からよ」


ハイオーク、グレートウルフ、オーガを倒して1桁の階を終えて地下10階に降りた。


「兄ちゃん達のせいか、おかしいと思ったんだ」


いきなり起こられた。ホビットの少年だ。


「君は?」

「おいらはパッサ、契約屋さ」


「契約屋?」


「精霊と契約したい人を精霊の居るところに連れて行くんだよ」


「君は精霊が見えるの?」

「そうさ、小さい時からね」


「凄いのね」


「それで、俺達が何かしたかい?」


「兄ちゃん達を見ると、精霊が怖がって逃げちゃう見たいなんだ」


「え~、私のせいかしら」

「リスバティは関係無いだろう」


「そうなんだよな。2人とも強そうじゃ無いし、変なオーラも出て無いんだ。おいらの勘違いかな、どっちにしろ今日は商売になんねえや」



パッサは、ぶつぶつ言いながら行ってしまった。


「う~ん、気になる」

「ホントにね」



気を取り直して前に進む、最初に出てきたのはバンシーだった。


こいつらの鳴き声を聞くと、頭がおかしくなると言われているが、俺もリスバティも少し耳障りなだけで、大丈夫だった。


丁寧に魔法で一頭ずつ倒していく。一段落したと思ったら、後ろから斧が降ってきた。


レッドキャップだ。


「妖精の国に来た見たいね」

「その様だ」


調度良い、この間の冒険者が使っていた暗殺剣の真似をしてみる。先ずは両手で剣を握り斬りかかるが、レッドキャップの奴は案外やる。


バックステップで軽く躱された。まあ、想定内だ。踏み込んでもう1度同じ事をする、しかし今度は踏み込む途中で片手にして剣を振って斬る。


片手にした為、腕と身体が伸びてレッドキャップが思った間合いと変わり、剣が届き首がポロリと落ちた。


流れる様にとは行かないが、こんな所かな。


地下20階までの後半は、ハリティー、ベリト、サキュバスなどオーガの上位種と妖魔の地域に入ったが、特に問題はなかった。


これでやっと目的の階にこれた。


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