第12話 決着
「何だ貴様、ここは冒険者風情がしゃしゃり出て来る所では無いわ。引っ込んでおれ」
「まあ、待つのだ、ダウラギ公爵。先程の挨拶と立ち振舞い見事であった。ただの冒険者では無かろう、申して見よ」
「ありがとう御座います、陛下。申し上げます。その神の誓約書は偽物かと」
「なんと!」
「き、貴様、言うに事欠いて。ただでは、すまんぞ」
「誰か、鑑定出来る者は居らんか。いなければ呼んで参れ」
「陛下、もっと良い方法が有ります。ここに居る皆様が一目で納得出来る様な」
「如何する?」
「王女様に、その神の誓約書に向かってホーリースプレンダーをかけて頂きます」
「……なる程、そう言う事か。それなら一目瞭然じゃな。メアリア頼む」
「はい、父上。『ホーリースプレンダー!』」
全員が神の誓約書を見つめる。しかし誓約書に変化は無かった。
「どう言う事だ、ロウグ司教!」
そう、神事によって神の力が宿っているなら、誓約書は聖なる癒しである光属性の魔法、ホーリースプレンダーを受けると、共鳴して光輝くはずなのだ。
「う、うわあ!」
司教は逃げ出したが、騎士によって直ぐ捕縛され、うなだれている。
「くそっ、最早これまで。皆、死ねぇ!」
公爵の奴、何か魔道具を持っている。自爆でもする気か。
『昇速×4』 奴のすねをこん棒で叩く。
「あぅっ!」
「公爵を取り押さえよ!」
ダウラギ公爵は騎士に連れられ、謁見の間からつれ出された。
「お主に救われたな、感謝するぞ。名は何と申す?」
「はっ、ミロウクと申します」
ーーーー
陰謀は発覚し、公爵に繋がっている者は全て処刑された。
マゼーレの国王は、ゾロイツェンの国王に密書を送ったそうだ。粛清の嵐が起こるんだろうね。
俺とリスバティは国王と伯爵から、しこたま褒美を貰った。
「私の息子になる気はないか?」
皮肉な話だ。父や貴族の汚い所を見て来たお陰で、今回はそれが役にたった。そして伯爵家を追い出された俺が息子にと言われている。
「有難い事ですが、2人でやる事も有りますし、世界を見て周りたいのです」
「そうか。……何か有った時は頼って欲しい。待っているぞ」
「ありがとう御座います」
「ミロウクさん、リスバティさん、このご恩は忘れません。ありがとう」
「レオナさん、お元気で」
「行ってしまわれましたね」
「うむ……」
ーー
「これからどうするの?バキンスの街に戻るの」
「せっかくここまで来たんだ、バレイシル王国のダンジョンに行って見よう」
「うん」
☆☆☆☆☆
「頭、やっとあいつらを撒いた様ですぜ」
「しつこい奴らだったな」
「俺達より酷い悪党なんか、他にたくさん居るのによ」
「そうよ、俺達は盗賊の中でも好い人なんだぜ」
「なに馬鹿な事を言ってんだ」
「一休みしたい所ですね」
「あそこに、洞窟が有るじゃねぇか」
「調べて見るか」
「部屋が有りますぜ」
「誰も居ねえし何もない。第一、生活感が無い」
「あそこに魔法陣が!」
「待て、私が見てみよう。何とかなりそうだ、ゴン、私と一緒に来い」
「へい」
「か、頭、こ、これ」
「何を慌てている」
「こ、これは」
膨大な数の魔道具が並び、重なっている。それも、そこいらに有るチンケな魔道具とは訳が違う。
「頭、これって?」
「ああ、間違い無い。勇者の遺産だ」
パッと見ただけでも、使い方によっては恐ろしい物も有る。だがこれさえあれば、奴らに復讐が出来る。
父さん、母さん、やっと仇が討てます。
「お前達、これを使って一勝負しようと思うが、どうだ?」
「「「おおー!」」」
ーーーーーーーーーーーー
「今日はここで1泊しよう」
「ここからなら、馬車で2日位かしら?」
「そんな所だ。飯でも食べよう」
「うん、お腹空いた」
オープンテラスの有るオシャレな店に入った。人気の店らしい、凄い賑わいだ。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「この店のお勧めの料理を頼む。後、ワインを」
「私も」
「かしこまりました」
「おい聞いたか?」
「あれか?」
「ああ、可哀相にな。せっかく勇者の遺産を手にいれたのにな」
「Bクラスの銀翼の連中でも、魔族の大群に襲われてはな、1人も生きて無かったそうだ」
「また魔族に襲われたのね」
「そうらしいな。200年前の勇者も罪な物を残したもんだ」
「お待たせ致しました。こちらが当店自慢のコジュケイ鳥を使った、コース料理です」
ロースト、皮だけを炒めたもの、野菜をコジュケイ鳥の肉で巻いて、串に刺し焼いたものにスープ。
どれをとっても美味そうだ。
「美味しそうね」
「さあ、食べよう」
コジュケイ鳥の料理を堪能した後に本屋に寄ったが、ツィガナー関係の本は無いに等しかった。店主によれば、関わっても商売以外の事は話さないそうだ。
「彼らの商売って?」
「女は占いで、男は錬金と鍛冶だよ」
「そうなのか、ありがとう」
翌日、バレイシル王国行きの馬車には、俺達の他に2人の冒険者が乗っていた。男女のペアで俺達と同じだ。
しかし様子が少しおかしい。オドオドしてると言うか挙動不審なのだ。まだ若いのにCクラスで優秀だが、余り関わらない方がいいかな。
だがリスバティは、お構い無しに女の子に話しかける。
「霧のダンジョンに行くのですか?」
「え、ええ、そうです」
「私達もなんですよ」
「そうでしたか。可愛い鳥ですね」
「誉められると嬉しいね、シュエネ」
「ピィピ」
俺のサーチスキルに何か引っ掛かった。
「リスバティ、注意して。貴方達も気をつけて下さい」
「は、はい」
「魔族だわ」
「くそっ、こんな所まで、何で判るんだ」
「貴方達、襲われる理由が有るの?」
「そ、それは……」
「リスバティ、理由は後だ。来る」
「はい」
馬車を止めてもらい、御者さんには隠れて貰った。
「いたぞ。あそこだ、人族の匂いがプンプンするぜ」
「貴方達、戦えるな?」
「はい、僕達のせいです。戦います」
距離はあるが先制攻撃だ、重ねを増やせば威力も上がり届くだろう。
『トーチ×20』
炎の渦は、先頭を飛んでいるブタ鼻の魔族を捲き込み、燃やし尽くした。
「ぐぎゃあ」
「ズ、ズメイル!」
「よくも、人の分際で。皆殺しにしてくれる」
ありゃりゃ、火を着けてしまった様だ。
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