第3話 勇気パーティーの子孫
俺の思った通り、リスバティは才能のカタマリだった。両親の良い所を受け継いだのだろう。
それに、普通だと考えにくい魔法属性を、併せ持っている。光と闇の属性だ。スキルは、自然に関係する物が多い。植物や天候などを操れる。
彼女は12歳だが、半魔族のせいなのか、とても大人びて見えるし、それに人族と外見は全く変わらない。たまに見せる仕草にドキッとしてしまう。
「ミロウク、どうしたの?」
「い、いや、何でもないよ」
俺達はダンジョンに入る為の資格、Dランクに上がるのを目標に頑張っている。いつもの様に依頼をこなし、ギルドに戻ると珍しく混んでいた。
「今日は混んでますね」
「うん、そうだね」
依頼終了書を出しながら、受付嬢のメアリさんに聞いてみる。
「何か有ったのですか?」
「勇者の宝物を発見した、英雄が来ているのよ」
「英雄ですか」
「そう、200年前に人族を裏切った勇者を告発して、魔王を倒したパーティーの子孫達。みんな、勇者の遺産の宝物と英雄の子孫を見に来たの」
「へぇ~」
冒険者達が左右に割れて、英雄達が出て来た。男女2人ずつのパーティーだ。それぞれが身に付けている、剣、槍、指輪、ローブが勇者の遺産だろう。
しかし、俺には判る。汚い貴族の中にいた俺には、彼らの傲慢と醜さが。彼らは、あそこに居た貴族どもと同じなのだ。
先頭の若い男は、俺とリスバティをチラリと見て、通り過ぎ様に俺の顔に、裏拳を撃ってきた。
「何をするのです!」
リスバティの手刀が、それを叩き落とす。
周りの冒険者達は、黙って見ているだけだ。
「ふうん、お嬢ちゃん、やりますね。何ね、そこの彼が私に敵意を送って来たと感じたからさ。勘違いだった様だ、女の子に護られるなんてね。お嬢ちゃんも、そんな男は早く見限った方がいいよ」
「ジェイクス、そんな奴、相手にしてないで早く行きましょう」
「分かったよ」
奴らは、嗤いながら出て行った。
「ごめん、リスバティ。奴らを見てたら、昔を思い出してしまって。気持ちが出てた様だ。気を付けるよ」
「いいのよ、私も、彼らが嫌な連中なのは判るわ」
俺の事はリスバティには、話してある。お互いの境遇が判った方がこれから先、良いと思ったからだ。
「さあ、気分を直して、美味しい物でも食べに行きましょう」
「そうだね」
リスバティと宿に戻り、自分の部屋に入ると、ここ最近の日課になっている、俺のスキル"重ねる"の他の使い方の立証だ。
魔法の重ね掛けだけではなく、力などの物理エネルギーや物に対する効果も重ねる事が出来た。
例えば、チョンと触ってもハンマーで叩く感じになったり、走るのも速くなる。グルーと言う樹液を物に塗ると、物にキズが付きにくくなり丈夫になるのだが、それがとても硬くなる、などだ。
上手く使えば、俺の身体は剣でも切れず、魔法も効かなくなるかも?
ーー
「今日は、どの依頼にするか?」
「そうね、…………これは?」
ラズリィ村のオークの調査か。俺達は今は、Eランクで、もう少しでDに上がれる。この依頼をこなせば昇級審査を受けれそうだ。
「よし、決めた」
身支度をして、ラズリィの村に出発だ。俺達のいるパテイラの街から馬車は出ていないので、歩いて4日かかる。
途中で襲って来た、ゴブリン達を強化したこん棒で撲殺する。剣で切るのと違って潰れるので余計にグロいが、スキルの実験なので仕方無い。
「こん棒で魔物と戦うの、ミロウクぐらいよ」
こん棒を生活魔法で洗っている俺に、リスバティが言って来る。
「軽くて使い易いんだぜ」
「そうだけど。まあ、仕方ないか」
グレートウルフにも出くわしたが、苦にはならなかった。夜営の時の食べ物も、アイテムBOXのお陰で問題ない。
予定通り4日目の朝、ラズリィの村に着いた。一息ついてから、村長に話を聞いた。
「裏の森を抜けた、山神様を祀る祠の奥に在る林の奥で、オークを頻繁に見る様になりまして」
「オークに気づかれては、ないのですね」
「はい、狩人のスキルを持った若い衆ですので、そこは大丈夫だと」
「早速、行って見ましょう」
「そうだね」
村長に祠までの行き方を教わり、村を出る。
「そろそろ気配を消して行くか」
紫のクリスタルで得たスキル、気配遮断を使う。この辺のスキルは、読んで字のごとしで意味が解るので使っても怖くない。
試しに"重ねて"見る。
「凄い。気配が全く感じないわ」
「やった、ラッキー。リスバティにもやって見ようか?」
リスバティは元々、気配遮断のスキルを持っているので、発動と同時に重ねて見る。
「どう?」
「気配が消えた。まるっきり無い」
「大した物ね」
慎重に林の中を進み抜けると、山の獣道を歩く。暫く行くと開けた景色になる。
「やっぱりか」
「オークの集落ね」
「みんなで何か作ってる」
「槍みたいよ」
「武器を作ってるのか?」
「それって、もしかして、村を襲う気?」
1つだけ、とび抜けた魔力を感じる。
「それも有るが、上位種もいるかも知れない」
「不味いわね」
「大体、100頭ぐらいかな。ギルドに報せた方が良い」
「往復で8日かかるわ、間に合うかしら?」
「う~ん、…………リスバティ、鳥をテイムできないか?」
「鳥?」
「うん。植物や自然に関係する物を操れるんだ、鳥や動物だって操れるかも」
根拠は無いが、リスバティなら出来る気がした。
「解った、やって見る」
「さすがに、ここでは不味い。移動しよう」
祠の在る所まで戻って、試して見る。
「じゃ、やって見る」
リスバティは両手を広げ大地に語りかける様に、林の中の鳥達に話しかけているようだ。
どのくらい経ったのだろう、一匹の小鳥がリスバティの手の平に止まった。
「やったな、その鳥の足に手紙を結ぼう」
「鳥さん、お願いね」
「ピィ!」
小鳥は大空へ飛んで行った。
間に合えば良いが。
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