第2話 半魔族の少女

 俺は走り続ける。あれっ、俺って、こんなに体力が有ったっけ?


これも、魔道具のせいだなきっと。ん、違いない。……前の方で、争っている気配がする。


暫くすると、2人の魔族に襲われている少女を見つけた。


何でこんな所に魔族が?……魔族か、ヤバいな。剣も無いし、俺は体術も苦手だ、ここから生活魔法で攻撃した方がよさそうだ。


「観念しろ、お嬢ちゃん」

「何をする、触らないで」


「お父上とお母上のもとへ、連れて行ってあげるよ」


「貴方達、絶対に許しませんよ」


「宰相のコンダゴン様のご命令だ。うだうだと理屈をこねて、サッサと魔国から出て行かぬからだ」


「酷い」

「お嬢ちゃんが、我らに勝てるとでも?死ねい」


「いや」


[ドッゴ~ン!]

「ぐはっ」 「げっ」



命中した。やったか?よし。




「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう御座います。……う、後ろ」


「えっ?」



「痛えな、くそ。何だ?ふん、人族ではないか。こんな所に居るとは怪しい奴だ」


「しまった、"重ね"が足りなかったのか。生きていたとは」


「兄貴、俺が殺っていいか?」

「好きにしろ」


「なめた真似しやがって、馬鹿な奴、死ね」


鋭い剣が俺を襲う。あ、ヤバイ、こんなの避けれる訳が無い。と思ったが、バックステップでかわしていた。


「くっ、こ奴、小癪な」


今度こそ。『トーチ×10』

おっ、口で言わなくても良くなっている。


炎の渦が、1本の角が有り小さな体の方の魔族を襲う。


「うぎゃあ~」


さすがは魔族だ。グレートウルフとは違い、叫び声は上げた。


「バグー、き、貴様、よくもバグーを。ファイアボール!」


魔族の動きが良く見える。避けるのは簡単だ、よし今度は違う生活魔法で試してみる。


『ブリーズ×10』


風生活魔法を受けた2本角の魔族は、手足、首と胴体が一瞬でバラバラになった。悲鳴は出せなかった様だ。


「よっしゃ!」


「あ、ありがとう御座います」

「どうして魔族に襲われていたの?」


「それが判らないのです。いきなり現れて魔国から出て行けと言われ、父と母は抵抗したため殺されてしまいました……私は執事のカレイドが転移の魔道具で逃がしてくれたのですが、あいつらも……」


「そうか、ごめん……えっ、君も魔族なの?」


「私の母は、人族なのです。なので、半魔族になります」


「そうなんだね。……これからどうするの?魔国に戻るつもり?」


「今の話だと無理そうです……私は強くなりたい。そして、出来る事なら父と母の仇を討ちたい」


この娘なら、才能があるし大丈夫だろう。


「なら、この谷から抜け出さないと」


「大丈夫です。この先は坂になっていて、登る事が出来ます」


「ホント、良かった。俺はミロウク」

「私はリスバティよ」





坂を登り切った所で、俺のお腹が鳴った。

[ぐぅ~]


「へへっ」

「うふふ」


「どっちに行けば良いのでしょう?」

「こっちだね」


何故か判ってしまう。それから、歩くこと一時間半でやっと街に着いた。


宿に一直線に向かう。部屋を決め、直ぐ食堂で食事だ。


リスバティは呆れた顔で、俺を見てる。


「ほふなかほで見ないでくへ」

「だって、酷い顔ですよ」



「ああ、食べた、食べた」

「お見事としか、言い様が有りませんね」


「それより、リスバティ。腕を磨きたいなら冒険者に成ったらどう?」


「冒険者に?」


「そう、魔物を倒し、ダンジョンに入り腕を上げる。金も貯まるし、言うこと無しだ」


「ミロウクが言うなら、やって見ようかな」

「よし、明日、ギルドに行こう」



明日の約束をして、お互いの部屋に戻った。



腹も膨れ、風呂に入ったので落ち着く事が出来た。ベッドで色んな事を想い起こす。


考えれば、よく生きて来れたな。先ず、アイテムBOXの中でも見てみるか。


オークの肉が出て来た。肉、肉が入っていたのか。腐っていない、時間停止している様だ。糞、もっと早く見れば良かった。薬類に魔物の希少素材、これがあれば金には困らないな。


後は剣だ。色んな種類の剣が有る。持って無いから丁度いいが、どれもかなりの業物だ。これは使わない方が良い気がするぞ。





うっ、いつの間にか寝てしまったか。ヤバイ、慌てて食堂へ行くとリスバティは食事を終えていた。


「ごめん、疲れてたみたいだ」

「いいですよ、気にしないで」




宿のおかみさんに聞いたところ、この街はダレンシア王国のパテイラと言うそうだ、冒険者ギルドに行くと、閑散としてた。変だな?もう少し依頼を見てる冒険者がいても良いのだが。



「冒険者の登録をしたいんですけど」

「いらっしゃいませ。お二人ですね」


「はい」


「では、この水晶に手を置いて下さい。あら、珍しいですね、紫色なんて。それなのに魔法属性もない、ますます変です」


人が気にしてる事を、ずけずけ言う娘だね。それにしても、あの魔道具で得た魔法属性は出ないんだな。


「お姉さんも変わってます。赤と白でグラデーションが綺麗、だけど魔法属性が無いです」


うん、これはリスバティのスキルのせいだね。


この後は登録料を払い、昇級のシステムを話してもらって、登録は終わった。



「ねえ、冒険者の人達はどこかに行っているの?」


「それで、困っているんです。200年前に魔王と内通してると言われて、全世界から追放された勇者の隠れ家が見つかって、お宝が出てきたのです」


「勇者のお宝ですか?」


「そうなんです。追放された勇者は、各地を転々としていたので、隠れ家はたくさん有るとされていて、冒険者は依頼そっちのけで宝探しに夢中なんです」


「なるほど、それで」


「だから、お二人とも依頼を頑張って下さいね」

「分かりました」




ーー


俺達はFランクなので、まだ大した依頼は出来ないが、防具と武器を揃えて、薬草取りとホーンラビット狩りに出かけた。



『トーチ×3』 ホーンラビットに命中。ああ、身体の半分がぶっ飛んだ。トーチ×1で良いな。魔法力が上がっているみたいだ。



「ミロウクの魔法は、変わっていますね。無詠唱だし」


「うん、もともと才能が無いからね」

「そんな事を言ったら、私だって」


「リスバティは、直ぐに上達するよ」

「本当に?」


「ああ、保証する」

「うん、頑張る」




この日の稼ぎはホーンラビットが20頭、薬草と合わせて銀貨16枚、銅貨8枚だった。


屋敷で嫌な連中といるより、ずっと気分が良く、充実した1日だった。


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