伯爵家を追い出された生活魔法しか使えない俺の建国記~知らない内に勇者のスキルを受け継いだ俺は、ダメスキル重ねるを使って魔族から追放された半魔族の少女と冒険旅、そして頼れる仲間と世界を救う
主水
第1話 プロローグ
「人族によって追放されたお前が、何故まだ人の為に戦う?」
「黙れ、僕は人の心を信じている」
「お前は知らないのだ。元々この世界の人は心は醜くく、汚い生き物だと言う事を。そんな甘い事を言っているから、パーティーの仲間にまで裏切られるのだ。死ぬがよい!」
「そうは行くか、喰らえ」
「何、グワァァッ」
くっ、身体が……魔王が放った光のせいか?早く治さないと、どこの隠れ家に行けば……意識が無くなる、くそっ、転移……
☆☆☆☆☆
「魔王様、復活おめでとう御座います」
「うむ、復活するまで200年もかかってしまった。あの勇者め、まさかあんな切り札を持っていようとは。しかしあやつも、余の元素転換魔法を受けたのだ、ただでは済んでいまい」
「その通りで御座います。魔王様が消滅した後、暫く経ってから勇者の気配も消えました」
「そうか、それで200年の間にどの様に変わった?」
「魔王様がいなくなった後、人族と共存しようとする穏健派が台頭し、魔族と人族の交わりも増え、子を成すものもいます」
「何だと、まだそんな者が残っていたか。魔族の誇りを無くしたそんな輩は粛清せよ」
「はい、直ちに。それと最近、勇者の隠れ家が発見され宝物が出たとかで、あの勇者を召喚した国の特殊機関や冒険者達が他の隠れ家を探し回っております」
「なにっ、それは不味いな。宝など、どうでもよいが、恐らく勇者の奴、余の魔法で何らかの結晶になっているはず。それが回収され、奴のスキルが復活する事になる様であれば非常に不味い。先に見つけるのだ」
「はっ、畏まりました」
復活したとは言え元の力を取り戻すには、まだまだ時間がかかる。完全復活し今度こそ、この世界から人族を消し去ってくれる。
☆☆☆☆☆
「解っているな、ミロウク?」
「はい、父上」
俺は、この屋敷のメイドだった母と、この屋敷の当主ザッハ伯爵との間に生まれた子だ。
死んだ母とザッハとの約束で、14歳の鑑定の儀までは、この屋敷に置いてもらえる事になっている。それ以降は、俺の魔法属性とスキルに懸かっているのだ。
王立の魔法学院の入学条件で有る、一定以上の魔力量と4種以上の魔法属性を持っているか。または、ザッハ家にとって有意義なスキルを持っているかだ。
そして、"今日が鑑定の儀の日"と言う訳だ。
「ガブル神官、始めてくれ」
「畏まりました」
「ミロウク様、水晶に手を」
「はい」
水晶に手を触れると、一瞬赤く光り直ぐに修まった。
「どうだ?」
「はい、魔力量は規定を満たしています。しかし、魔法属性は1つも有りません」
「そうか、スキルは?」
「"重ねる"と有ります」
「何だそれは?」
「過去に例は有りません。恐らく物を重ねる能力かと」
「くだらないわね」
「その通りだ。我が家に相応しくないな」
「残念だな、ミロウク」
「はい。では、これで失礼致します」
「やっと、この屋敷から下賎の血をひく者が居なくなる」
「ホント、これで息がまともに出来るわ」
友を裏切り、仲間を礎にして栄えて来たザッハ家が、高貴な血筋とは思え無いがな。まあ良い、俺もせいせいする。
父からもらった革袋には、金貨1枚と銀貨10枚が入っていた。あの父にしては、くれた方だな。
いずれにしても無駄使いは出来ない。他の国で冒険者登録をする為に、この国を離れよう。俺は街道をひたすら歩いた。
この森は魔物は出ないとはいえ、明るい内に森を抜けたい。
何せ俺は、無属性で生活魔法しか使えないのだから。
スキルは、前例のない無い物らしいが……。少しは期待してたのにな、糞。
愚痴を言い、下を向いて歩いていたが、ふと目を前を見ると20m先にグレートウルフがいた。何でこんな所に、本当についていない。
俺は横に向いて走り出す。当然、逃げ切れる訳もなく追いつかれバッグに噛みつかれた。
どうしたらいい?取り合えず、火だ、火。グレートウルフはバッグを食いちぎり、今にも俺に飛びかかって来る勢いだ、俺の心臓は口までせり上がって来ている気がする、慌てた俺は火の生活魔法"トーチ"を何回も口にした。
「トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ、トーチ」
着火するだけの火の生活魔法トーチは、ポワッっと空中に着くと、次の瞬間大きく膨れ上がり渦を巻き、グレートウルフめがけて飛んで行った。
炎の渦に包まれたグレートウルフは、あっと言う間に、悲鳴をあげる事も無く燃え尽きた。
「えっ、何?どうした」
助かったのか?尻もちをついていた俺は、呆然として立ち上がった。直ぐに右足が滑り体勢が崩れる。何だ、崖だったのか。俺はそのまま暗闇に吸い込まれ落ちて行った。
気を失っていた様だ。どのくらい経ったのか?頭が酷く痛い。左腕、左足にも激痛が走る。折れているのだろう。
辺りは薄暗く、Vの字状の谷になっている。生活魔法の"ライト"で周りを照らす。痛い頭で必死に考える、まだ死にたくは無い。
どうして、グレートウルフを倒せた?俺にあんな魔法が使える訳が無い。生活魔法のトーチを唱えただけだ。
俺は他に何をやった?怖くて怖くて焦って、トーチを何回も口にしたんだ。そう、何回も……。
俺のスキルって、何だっけ?"重ねる"って、重ねるだよな。物でなくてもいいのか?言葉でも。試しにやってみる、ダメ元だ。
ちょっとした、傷や火傷などを楽にする生活魔法のヒールを、左腕に向けて連呼する。
「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール」
俺の左腕が白く光輝き、痛みが消えた。左腕を動かす事が出来た。間違い無い、これだ。俺のスキルだ。左足も同様に治すと頭の痛みも和らいだ。
「あ~、腹が減った」
暫く谷底を歩いても何もない。バッグはグレートウルフに食いちぎられて無いし、クソッ。地面の石ころを蹴る、石ころは洞穴に吸い込まれて行った。
「洞穴だ」
少し考えて、中に入って見る事にした。薄暗いが、灯りの生活魔法"ライト"のお陰で良く見える。奥まで行くと木の扉が有った。
「誰か居ますか?」
返事は無く扉は簡単に開いた。中には、机、イス、ベッドだけだ。冒険者の隠れ家だなきっと。食べ物を探すか。
見事に何もない、イスに座ると尻に何か刺さった。
「痛っ」
何かの結晶だ。紫色のクリスタルを手に持つと、淡く光出し俺の手の平に吸い込まれて行く。
「な、何?」
何だった?、別に身体に異常は無い様だ。心なしか身体が軽くなった気がする。気分も良い、この部屋の持ち主が置いていった体力回復の魔道具だったのかも知れない。
それにしても腹が減った、ベッドに寝ころんで今までの事を考えて見る。
偶然とは言え、グレートウルフを倒したんだ、スキルアップしているよな。
「ステータス!」
えっ、どうなってるの、これ?
魔法属性に光と冷気属性が付いている。冷気属性なんて聞いたこと無い。しかも、スキルもアイテムBOXなど、訳の解らない物がたくさん付いている。
これって、やっぱり、さっきのクリスタルの魔道具のせいだよな。ヤバイ、持ち主が帰って来たら怒られる、きっと高価な物に違いない。弁償なんて無理だ。
俺は怖くなり慌てて外に出て、谷底を走り出した。
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