帝国放送協会報道特集『TOKYOシャングリラ 再開発が加速する東京の光と闇』

『この街の人々は、平凡でかつ退屈な日常と戦い続ける社会人が圧倒的でした。

 ですが、あの日、9月11日のテレビから流れたあの衝撃の光景。

 崩れ落ちる摩天楼が我々の目に映ったその翌日から、世界はまるで開き直ったかのごとくその装いを変えてしまったのです。

 冷戦の勝利は過去に追いやられ、湾岸戦争の怨念が新たな差別を生み、我々が夢見た新世紀の輝かしい未来はもはやどこにもない。

 こうして新世紀はテロとの戦いという戦争から幕を開けたのです。

 かくも激しく、かくも混沌とした新未来の始まりを誰が予想したでしょうか?

 しかし、この街の我々にとってはそれすらも新たなる始まりにすぎません。

 世界経済というサバイバルを生き抜き、かつてのいかなる先達たちも実現し得なかった地上の楽園を、あの永遠のシャングリラを目指そうとしています。

 今日はそんな街、東京の今を見ていきたいと思います』




『新宿ジオフロント。第二期工事区画。

 新宿新幹線ホームフロアを中核とするここの工事はこれから本格化します。

 また、この工事で花開いた技術革新は、東京や他の街に更なる地下都市の花を咲かせました。

 池袋と秋葉原では工事が既に始まっており、大阪・名古屋・札幌でもその計画が本格化しようとしています。

 これらの工事を推し進めたのが恋住政権と桂華グループです。

 恋住政権の不良債権処理によって制定された都市再生特別措置法によって再開発が容易になり、そこに公共事業としての桂華グループ主導の新宿新幹線建設工事が重なり起爆剤となったのです。

 更に、容積率緩和によって東京の各地で再開発の計画が立てられており、その件数は既にバブル期を超えているのです……』



『丸の内地区。

 日本屈指のビジネス街であるこの街に多くのビルを保有している岩崎地所は、この容積率緩和の好機を逃しませんでした。

 建て替えに伴う再開発だけでなく、それらの再開発ビルを複数同時に建設する事で、地下だけでなく空中回廊による一体化を目指すと発表。

 「丸の内アーコロジー計画」と名付けられた巨大再開発計画は、岩崎財閥の本社群を集めた壮大なもので完成は2030年と言われています。

 何故このような再開発が一気に発表されたのでしょうか?

 ここ都内を始めとした都市部の土地は、バブル期の狂乱する地価によって投機の対象となりました。細切れに売り買いされた土地は、バブルが弾けると細分化されたまま不良債権として塩漬けされてしまいます。

 都市再生特別措置法を始めとした規制緩和はこの細分化された土地の再開発工事を容易にし、塩漬けされていた土地が再び動き出そうとしているのです……』



『東京都港区汐留。

 かつての貨物駅跡地は今や巨大な高層ビジネス街に生まれ変わりました。

 都内各地の再開発が行われる間の代替地として注目を浴びる港区は、東海道新幹線品川駅開業によって今一番東京で光り輝いています。

 その港区の象徴がタワーマンションです。

 現在も建設工事が続くこれらのタワーマンションの住人達は、年収が1000万円以上のホワイトカラー層によって構成されています。

 彼らの多くは規制緩和によって進出してきた外資系企業の社員であり、都内の有力デベロッパーは、こうした高層ビルやタワーマンションの建設の動きはこれからも加速するとインタビューに応じてくれました。


「桂華グループの新宿ジオフロントと岩崎財閥の丸の内アーコロジーをわが社もまねて、高層から地下まで一体開発する『ジオ・アーコロジー』をこの港区で計画する」


と……』



『東京都港区台場。

 今、工事が一番進んでいるのはここを始めとした湾岸開発です。

 都内各地の工事で出る残土は羽田空港拡張工事や中央防波堤埋立に用いられる予定であり、現在は岩沢都知事が提唱しているお台場カジノ構想で一躍脚光を浴びています。

 今回、取材班は外資系大手カジノ企業の現地取材に同行を許可されました。


「ホテル・カジノ・劇場の一体型施設を建設したいが問題はないのか?

 空港からここまでのアクセスはどれぐらいか?ヘリによるセレブ層の輸送については許可がおりるのか?

 モナコみたいな目玉イベントについては……」


 この取材で都や政府関係者と共にカジノ企業に説明をしていたのはここに本社を構える富嶽テレビの担当です。

 カジノはギャンブルだけでなく、エンターテイメントビジネスであり、そのエンターテイメント面について富嶽テレビは全面提供を約束しています。

 また、新興ネット企業フェブエッジ、外資メディア企業ガーファ・コーポレーションとアヴァロン・アトランティックもこの計画に賛同しており、これらの巨額な建設費用を彼らは外資系金融機関より調達して……』



『千葉県木更津市中島。

 木更津方舟はこの東京の再開発の影の部分を背負っています。

 ここに住んでいる人口は一万人ほどですが、登録されている人口は十万人を超えています。

 その影響は市議会で真っ先に表れました。

 2003年の木更津市議会議員選挙で当選した方舟住人の議員は3人。

 その三人は樺太出身者、ロシア系、華僑の三人で、北日本政府崩壊時にこちらに移り住んできた人たちです。

 同時期に行われた千葉県県議会選挙木更津選挙区では惜しくも届きませんでしたが、その差は千票以内という接戦でした。


「我々新参者が元からの住民にあまり良い目で見られていないのは自覚しています。

 信頼をこれから作らなければなりません」


 当選した市議会議員はインタビューにそう答えてくれましたが、今年発覚した木更津方舟での偽札事件が暗い影を落とします。

 とはいえ、この木更津方舟から発生する税金や補助金はバブル破綻で財政悪化に見舞われた木更津市にとって手放せない物なのも事実で、木更津市や千葉県は難しいかじ取りを迫られています。

 これはここだけの問題でなく、全国規模で発生しようとしているのです。

 あるリサーチ会社が行った調査では、現在樺太に住む住人およそ二千万人の内、本土に移住するかもしれない住人が六百万人から八百万人と発表され、各方面に衝撃を与えました。

 これらを見越して既に北海道や大阪や名古屋などでも方舟都市が作られましたが、そのキャパシティーでは追いつかないのは明白で……』




『東京は、押し寄せる時代をものともせず、新宿、池袋、秋葉原、丸の内、湾岸などの再開発が急速に始まろうとしています。

 そして奇妙なことに、あれだけ苦しめられていたはずの不良債権処理が何時の間にか人々の話題から消え、我々がついこの間まで見慣れていた風景があっちで朽ち果てこっちで廃墟になり、いつの間にか新しい景色に変わっているのです。

 東京。我々はこの奇妙な街の今を追っているうちに、何かこう時の流れに取り残されたような、そんな気分になってしまいます。

 あの運命の夜からわずか数年。

 しかし今、我々の築きつつある東京はひたすら走り始めているのです……』




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語りは間違いなくあの人

『うる星やつら ビューティフルドリーマー』メガネの語り+『機動警察パトレイバー the Movie』松井刑事のぼやきを足して、NHKスペシャル『沸騰都市  TOKYOモンスター』で割ってみた。


NHKスペシャル『沸騰都市  TOKYOモンスター』

 何が恐ろしいって、ここで放映されたいくつかの事が既に完成し、挫折し、更に想定外に進んているリアルパイセンのエンターテイメントぶりよ……


アーコロジー

 ここでは、企業内都市という意味合いで出している。

 多分作るとしたらここだろうなという感じ。


東海道新幹線品川駅開業

 2003年。あまりの便利さに品川駅が昔からあったような錯覚を覚えてしまう。

 なお、新横浜の変わり様もまた凄くて……


タワーマンションのデータ

 ありがたい事にデータがあったのでペタリ。


首都圏のタワーマンション棟数、最も多い行政区は港区の 76 棟

https://www.kantei.ne.jp/report/97TM_shuto.pdf



2003年

木更津市議会議員選挙

https://go2senkyo.com/local/senkyo/9644

千葉県議会議員選挙木更津市

https://go2senkyo.com/local/senkyo/19174/37886


 つまり、この人間を票として確保すればその自治体に影響力を発揮できる。

 『ひぐらしのなく頃に』での雛見沢村や園崎家の影響力の一端が見れるし、何ができるかという指針になる。

 マジで県議に人を送り込めると、世界が変わるぞ。

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